ゼロの相棒
別れの魔法
夜が明け、朝日が窓から差し込んできた。
私は結局、あれから一睡もすることができず、頭の中ではジェノバの言葉がぐるぐるとこだましていた。
重い足取りでキッチンへ向かうと、そこにはジェノバがいた。
ジェノバの姿を見た途端、ぎゅっと胸が締め付けられたように苦しくなった。
「おはよう、フィオネ。ゼロ君は朝早くに出て行ってしまったよ。
フィオネとも一言話せればよかったのになぁ。」
私はゼロのことを考える余裕はなかった。
頭の中はジェノバの寿命でいっぱいだった。
その時、ジェノバが急に咳き込み出した。
「ゲホッ!!ゲホ、ゲホ!」
私はジェノバに駆け寄る。
「ジェノバ!!大丈夫?!」
「だ…大丈夫だよ。フィオネ。」
あぁ…。ジェノバはいつから命の終わりを感じていたんだろう。
いつも私のことを心配してばかりで。
私は、終わりがすぐそこに迫っていることなんてまったく気にしていなかった。
「ジェノバ!!今からもう一度、薬を盗ってくるよ!待ってて!!」
私は、いてもたってもいられなくなり、なりふり構わず走り出した。
早く薬を持ってこなくては…!
薬さえあれば、ほんの少しかもしれないけれど、ジェノバの時間が伸びるかもしれない!
そんなことしか頭にはなかった。
ジェノバは驚いたように私を止める。
「フィオネ!待ちなさい!!」
ジェノバの声が背中に聞こえたが、私は振り返ることはしなかった。
私は町へと力の限り丘を下った。