ゼロの相棒
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ゼロは、夕方になってもまだ戻ってこなかった。
……どこまで行ってるんだろう。
まさか、このまま帰ってこない、なんてことはないよね?
捨てられたとか…ありえないよね……?
私は心配して時計を見つめる。
時刻は十八時だ。
十一月ともなれば、日が暮れるのも早い。
宿の装飾が、星空へと変わっていく。
私は、魔法がかかっていく様子をじっ、と見ていた。
ベッドに腰掛けると、テーブルの上のカップが目に入る。
朝、ゼロがココアを飲んでいたカップだ。
ゼロ……何やってるんだろう。
私は、無意識に新しいカップを取り出して、ゼロが残しておいてくれたココアの粉半分を入れた。
ゼロが帰ってきたら、私の半分をあげよう。
お湯を沸かして、カップに注ぐ。
甘い香りが部屋に漂う。
ゼロってば…いつ帰ってくるのかな。
私は、自分の分のココアを一口飲んだ。
すると、その時部屋の外から足音が聞こえてきた。
その音は、だんだんこちらへと近づいてくる。
しかし、少年の軽い足音ではない。
ジンかな…?
そう思っていると、私の部屋をコンコン、とノックする音が聞こえた。
「はーい。……ジン?」
私がガチャ、と扉を開けると
そこには想像もしてなかった人物が立っていた。