ゼロの相棒
ジンの言葉に、私も、はっ、と思い出す。
あの男が町に魔獣を引き寄せたりしなければ、ゼロもあんな無理な姿勢で魔法を使おうだなんて思わなかったかもしれない。
もっと楽に事が運んでいただろう。
「あいつが町に入ってきた時に手を打っておくべきだったな…。」
ジンがぼそ、と呟いた。
そういえば、ジンもゼロも、あの男からは闇の気配を感じると言っていた。
…本当にあの男は百年前の王の末裔なのだろうか。
すると、ジンがすくっ、と椅子から立ち上がった。
「…じゃあ、僕はちょっと野暮用に行ってくるよ。フィオネちゃんも無事なようだしね。
ゼロのこと頼んだよ、相棒さん。」
ジンはそう言って私に笑いかけると、パタン、と扉を開けて行ってしまった。
野暮用…?
何やら、ジンは表面には出していないが
心の中で色々複雑に考えているんだろう。
黒マントのことや、これからのことを…。