ゼロの相棒
月の出ない、一番長い夜が始まったんだ。
月が主役でない今、星たちが空一面を覆って輝いている。
私は丘の方を見渡すが、
特に異変は何もない。
ランプなどの明かりも見えないし、もし人影が闇に隠れていたとしても、丘は一面の草原だ。
気づかないことはない。
ドロシーは、瞳を輝かせながら丘を見ているし、遠視能力があるドロシーに任せておけば、見落とすことはまず無い。
「ねぇ、ドロシーはルナータがいつ町に現れると思う?」
私は、ふと、ドロシーに尋ねた。
「うーん……。ルナータはダリシーン王の魔力が弱くなる時を狙うでしょうから、もうじきじゃないでしょうか。」
そうか。
月の出ない晩には、ゼロの魔力は元に戻るけど、ダリシーンの魔力は弱くなるのか。
…弱くなると言っても、そこらへんの上級魔法使いよりも強いとは思うけど。