ゼロの相棒
そうこうしているうちに、目の前に大きな森が見えてきた。
背の高い木が、太陽の光を遮るように
所狭しと並んでいる。
樹海と言っても言い過ぎではない。
「この森を抜ければ町が見えるはずだ。
この森は暗いし、入り組んでいるから
俺の側を離れるなよ。」
ゼロはそう言うと、小さなコンパスを出して、歩き出した。
森の中は少し冷えている。
私はゼロを見失わないように、なるべく距離を開けないようにして付いていく。
少し歩くと、ゼロはある方向を見つめながら、ピタリと足を止めた。
私は少し驚いて立ち止まる。
「ゼロ?どうしたの?」
「フィオネ。あの木を見て。」
ゼロが指を指す。
その方向を見ると、一本の太い樹があり、その幹の中間地点には獣のもののような大きな爪痕がある。
私が驚いてまじまじと見つめていると、ゼロが爪痕をなぞりながら言った。
「これは魔獣の爪痕だな。それに、結構最近に出来たものみたいだ。」
私は聞きなれない言葉を聞いて、ゼロに尋ねる。
「魔獣って?」
ゼロは再び歩き出しながら答える。
「魔獣は魔法使いの魔力に引き寄せられてくる獣の一種だな。
大きさや強さは様々で、時には魔法使いのペットになることもある。」