ゼロの相棒





魔獣が大きく爪を振り下ろす。





私はそれを紙一重で避けた。





あんなのに引っ掻かれたら一瞬であの世行きだ。




せめて、広場に着くまでの間は避け続けなければ。





私は精一杯の力で路地を駆けた。






後ろから魔獣が追いかけてくる足音が聞こえる。



私は後ろを振り返る余裕もなく全力で走り続ける。







ようやく路地を抜けて、次の道へ出た時だった。







「あれ?どっちから来たんだっけ…?!」






目の前にはいくつもの分かれ道が広がっている。





私は焦って周りを見渡す。






獣の足跡を追って来たから

自分がどの道を通ってきたのかわからなくなってしまった。





どこの道に入れば元に戻れるんだろう。







その時、背後からものすごい地響きと、地面の削られるような音が聞こえた。



魔獣が腕で路地のコンクリートを削りあげて、割れた石の破片が私めがけて飛んでくる。







「痛っ…!」






鋭い石が私の肩から足をかすっていく。





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