ゼロの相棒





当たったところから血が流れる。







とりあえず立ち止まったら命取りだ。




方向がわからなくても必死で走り続けるしかない!







行き止まりにならないことだけをひたすら願って、私は走り出した。







だんだんと息が上がり始める。




せめて大通りにさえ出られれば…!









その時、大きな影が私の頭上を通りすぎる。







魔獣が私の上を飛び越えて、目の前に現れた。







私はとっさに、ジンに借りていた短剣を投げつける。






それは魔獣にグサリ、と命中したが、あまり効果はない。







私は周りを素早く見渡したが


横に、逃げられる路地はなかった。












避けられない!









そう思った時には遅く、






次の瞬間




魔獣の腕はもろに当たって、
私は壁に身体中を打ち付けられた。








「かはっ……!」








全身に打撃を受けて、息ができない。






幸いにも爪に当たることはなかったが


腕で殴られたところに激痛がはしる。





今までに感じたことのない痛みだ。





闇町で捕まって殴られたり蹴られたりしたことはあったが





格が違う。






魔獣は間髪入れずに、私に大きな爪を振り上げた。








……殺される……!








そう思った時だった。





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