ゼロの相棒
俺が迫ったって、少しも動揺してなかったじゃん。とゼロは続ける。
「だって、あの時とは…違うもん…。」
初めてこの町に来た日の夜と、ゼロは同じゼロだけど
声も、体温も、体に感じる重さも
まったく違う。
その時、ぱっ、とゼロが私から離れた。
ゼロが何を考えているのかわからずにいると、
彼はベットから降りて、カーペットの上に立つ。
「そんな警戒しなくても何もしねぇよ。
フィオネが、あの日少しも動揺してなかったから、ちょっと悔しくなっただけ。」
ゼロは静かに続けた。
「俺は相棒には特別な感情は持たないから。」
どん、と鈍器で殴られたような衝撃が走った。
そのことに自分でも驚いている。
私は動揺を悟られないように言う。
「私も相棒以上の関係なんて求めたことはないわ。」
私の言葉に、ゼロは「そうだよな。」と静かに答えた。
私は、なんでこんな私自身の言葉に
ショックを受けているんだろう。
その言葉に嘘などは一つもなかったはずだ。
私は、ゼロの“相棒”。
それ以上でも、それ以下でもない。
なのになんでこんなに悲しい気持ちになっているんだろう。
月のない夜が、静かに時を過ぎていった。