水が降りるとき
12がつ25にち 夜中の1時くらいのこと
ふっと目が覚めたの。ずっと続いていた熱は、少し下がったみたい。
眠い目をこすって、窓のそとを見ると、まだ真っ暗。
パパも、ママも、まだ寝てる。
…………たぶん。
なんとなく寝られなくて、ママたちの寝室に行ってみた。
「……いない」
いつものことだ。平気。慣れてるもん。
パパも、ママも、忙しいの。知ってる。
私も、いつも家にひとり。熱をよくだすの。ちょっとした刺激で、熱が出たり、倒れたりするから、学校だって何回かしか行ったことない。
友達がほしいとか、せめてママだけでも、ずっと傍にいてほしいだとか、ワガママは言いたくないけど。でも。
「クリスマスくらい、一緒にいたかったんだけどなぁ……」
昨夜だって、二人とも帰ってこなかった。
誰もいない部屋に、一人、呟く。
「……いいの。慣れてるもん」
その瞬間に聞こえた優しい声。知らないおじさんの声。知らない声なのに、どこかほっとするような。
「何に慣れてるって?」
ビックリして振り向いたの。
そこにいたのは、窓から顔を出した白い髭のおじいさん。赤い服着たおじいさん。
「あなた、だれ?」
怪訝な顔で聞いたら、おじいさんはこう答えた。優しい笑顔で。
「君にプレゼントを届けに来たんだ」
「どんな?」
「開けてごらん」
そう言いながら、おじいさんがプレゼントの箱を渡してくれた。真っ白な箱に、緑のラインが入った赤いリボン。
箱を開けると、
「うわぁ……」
思わず歓声を上げた。だって、ほんとに綺麗だったの。
翡翠色の砂が入ったガラスの小瓶。
「好きな本を持ってきてごらん。」
首をかしげながら、お気に入りの絵本を取り出した。そして、そのおじいさんに差し出すと、にっこり笑って、私から小瓶も受け取った。
おじいさんは、小瓶のコルクをとって、砂を出す。そして、それを絵本に振りかけたの。そして、わたしの手にも、ほんの少し。
とたん、目の前の世界が消えて、足下には星を映した海。
お気に入りの絵本の始まりと同じ景色。
「楽しんでおいで」
そんな声を残して、おじいさんはどこかに消えた。
「あら、こんにちは。はじめましてね。あなたは誰?」
代わりに現れたのは、この絵本の主人公の親友、リアン。人間みたいな姿に、透き通った蒼い羽。
「こんにちは!わたしは………」
たくさん、遊んだ。
楽しかった。
目が覚めたら、ベッドの上。
「…………夢?」
でも、手のなかには、翡翠色の綺麗な砂。
思わずにっこり微笑んだ。
友達ができたの。
リアン、シエル、ジェイにルイス。
とっても楽しかった。
「優里ー!起きてー!」
ママの声。
ビックリして起きて、すぐに駆け出す。
今日は最高のクリスマス。
いつもはいないママが帰ってきて、手に入らないはずの友達ができて………。
……サンタさん、ありがとう
きっと、あのおじいさんはサンタクロースなんだよね。
。゚.:*:.゚。クリスマス゚.:*:.゚END。゚.:*:.゚。