水が降りるとき
私は先月この学校に転校してきた。
初めての転校。慣れない場所。
不安でいっぱいだった。
「は、はじめまして。野幌小学校から来た秋山なつきです。えっと、仲よくしてください!」
初めての挨拶は凄く緊張して、かみかみだった。そのあと、恥ずかしさに、真っ赤になって俯いたのを覚えている。
そのあと、先生に言われた席に座った。
隣の席の男の子がすぐに話しかけてきた。
「や、なつきって呼んでいい?あ、僕はソラ。空が来るって書いて空来な。前の学校どんなんだった?ここと比べてどう?そうだ、校内案内してあげるよ。あ、ごめん。なんか言おうとした?なに?」
「え、えっと、あ、ありがとう。えっと、空来くん」
空来くんの第一印象は、よくしゃべる子。マシンガントークに口をはさめず、気圧されながら相づちをうっていた。でも、慣れないところで、引っ込み思案だった私は助かっていた。私、うまいこと話せないから…。
今、私は空来くんと同じ委員会。先生が名簿見せながら選ばせてくれたの。まだ私は空来くんしか分かんなかったから、空来くんと同じ委員会を選んだ。我ながら恥ずかしい理由だ。
「おーい!なつき!一緒に行こう!」
「うん!ちょっと待って!」
でも、空来くんと一緒に仕事するのは楽しい。それに、空来くんはいつも私を助けてくれるの。分かんないことばっかりで、空来くんには迷惑に違いないのに…。
クラスに大分馴染んできた今も、私は空来くんから離れられない。ずっと一緒にいたい、なんてワガママまで考え始めた。
我ながらどうしようもないと思う。
人見知りも大概にしなくちゃ、ね。
でも、空来くんのこと、大好きだか……ら?
え、大好き?私が?誰を?
……空来くんを。
そこまで考えた瞬間、ボンっと顔が熱くなった。
「あれ?なつき?顔、赤いよ?大丈夫?熱ある?」
そんなことを言いながら、おでこに手を添えてくる空来くん。
「だだだだだ大丈夫だから!」
「そうか?無理すんなよ?」
大丈夫。無理なんてしてない!顔が赤いのは空来くんのせいだからー!
なんて言えない。
「うん、大丈夫。ありがとう!」
今は、このままでいい。ただ、空来くんのそばにいたいだけだから。
。゚.:*:.゚。初恋゚.:*:.゚END。゚.:*:.゚。