水が降りるとき
消えてしまいたい。そう思うことはよくある。とりわけ、今日のように、私は要らないと、至極当然で、そうあるべき事実を、痛いくらいに突きつけられた日なんか。
学校帰り、バスを待つ間、今日のことを思い返していた。いつもなら、一人でいても何も思うところはないけれど。今日のような授業の形式は、普段は鈍り、気づかない感情を思い出させる。
チームワークの大切さでも教えたかったのだろうか。きっとそうなのだろう。誰かと協力し、何かを達成すると言うのは、きっと大切なこと。
けれど、そういうことならせめて、グループは決めておいてほしかった。いや、これも甘え、か。でも、嫌なものは嫌だ。好きなようにグループを作れと言われたら、仲のよい子同士で固まるのは必然。指定された人数を満たした子達がどんどん席を取っていく。
ならば、私のように、特に親しい友人のいない子は、どうしたらよいのだろう。
でも、ああ、きっとそうだ。チームを組むために、人を集める、あるいは人の輪に加わる訓練でもあるのだろう。ならばきっと、私のようなでき損ないは、その場の空気を壊す、厄介者なのだろうな。
ふと目を閉じて、体から意識を手放した。ふわりと分解されて広がる。消えてしまいたいとき、私はいつもそうするのだ。空に舞い上がって溶けるとき、私は自由だ。重たい体もない。穏やかな心地だ。
ああ、このまま、空に溶けて消えてしまいたい……
私が私を手放して、そうして完全に溶ける瞬間に。私は突然体に引き戻された。ひんやりと指先に触れた何かが、霧散した意識を急速に呼び戻す。
意味もなく泣きたくなった。
降り始めた雪が、私を現実に引き戻したのだ。
今年の初雪は、ずいぶんとロマンチックな降りかたをしている。
ふわり、ふわりと、優しく触れるくせに冷たい温もりは、手のひらに舞い降りて融ける瞬間に、優しい温かさをくれる。優しく私に触れて、その冷たさで、消えてしまおうとした私を私に戻すのだ。私が私を手放すことを許してくれない。私が溶けるのは許さないくせに、自分はすぐに解けて消えるのだ。
目を開いた私の目に映る、大きめの雪がふわりふわりと舞い降りるさまはとても幻想的で、ドラマの中くらいでしかお目にかかることのないような風景だった。
私の目もとに触れた雪が、次々と解けて、頬を伝い落ちていく。この雪も、きっと明日には消えている。