叶ったはずの恋。
Side 龍貴
『お前らぁ~!
真面目にキャッチボールしろぉ~!!』
春休みも終わりに差し掛かった今日。
今日も俺は中学校の校庭に立ち、生徒達にソフトボールを教える。
「龍せんせー!今日厳しーぃ!!」
そんな女生徒の声が聞こえるが気にしない。
部員たちは調子が悪いのか暴投ばかりでキャッチボールになっていない。
まったく、困ったもんだ。
俺は溜め息をつくと空を仰いだ。
夏希…元気にしてるかなぁ…
そう言えば、もうすぐ大学の入学式だよな。
ってことは、スーツを着るんだ。
アイツのスーツ姿、見たかったなぁ…
なんて、空を見上げながら夏希のことを考える。
どうやら俺は夏希が好きで仕方ないらしい。
自分でも呆れるよ…
なんて考えていると
『龍せんせー!球…行っちゃった!!』
瑛司の声が飛んできて。
そうするとすぐに俺の足下を白い球が転がっていく。
気づいたときにはもう、俺を通り過ぎて行って。
チェッと舌打ちをした俺は球を追いかける。
『すいませーん!こっちでーす!!』
転がっていった球は結構遠くまで行ってしまう。
でもそこを通りかかった人が拾ってくれた。
俺は手を挙げアピール
そうすると突然、球を拾った人はピッチャーのように構えた。
そして、1歩踏み出す。
筋肉質の腕から放たれた球は見事、俺のミットに収まった。
その構え
踏み出した足
女のくせに筋肉質な腕
それは俺がよく知ってる人
俺の…愛する人
『……………夏希』