叶ったはずの恋。
『はい、今日は終わり!
早く帰れ!!』
夏希のノックが終わると俺は叫ぶ。
みんなは早く練習が終わった~!なんてはしゃいでいて。
『頑張って、龍先生!』
手を振りながら瑛司をそう言って。
よし、これからだ!
俺は気合いを入れる。
『夏希!……?』
振り向くとグローブとボールを持った夏希がいて。
「久しぶりにやろうか、桐ちゃん」
ニヤッと笑う夏希にグローブを渡される。
え…?
またもや俺の話はお預け??
「早く!桐ちゃん!!」
ただ、そんなことを思いながらも俺の心の中は踊っていた。
相変わらずの夏希。
少し強引で、何も変わっていない
そして夏希とキャッチボール
夏希の右肘は3年前に壊れた。
そして今は左で投げている。
でも俺は左が完璧な状態になってからの球は受けたことがない。
練習中の左しか知らない俺は
夏希とのキャッチボールが楽しみで仕方ないのだ。