叶ったはずの恋。
「手紙読んで、苦しくて。
大ちゃんがあたしなんかに優しくするから甘えちゃって。
ファーストキス…奪われちゃったじゃん
桐ちゃんのために残しておこうと思ったけど
桐ちゃん…忘れて、って言うから。
ホントに…意味分かんない
あたしに、ケンカふっかけてるのかと思った」
右の拳で桐ちゃんのお腹を軽く殴る
ただ、その拳は桐ちゃんの大きな手によって捕まえられてしまった。
『何…ファーストキス、奪われてんだよ?
夏希は…俺のだろ??』
桐ちゃんの空いている方の手…右手があたしの背中に回った。
『俺の』
頭に響いた。
桐ちゃんの…
あたしは桐ちゃんの、なんだ。
そう思うと溢れ出した涙は止められなかった。
桐ちゃんはあたしから少し離れ、顔を覗き込んだ。
涙を見られたくなくて顔を背ける。
それなのに
『夏希』
桐ちゃんはあたしの目を見つめる。