叶ったはずの恋。
俺は朝子ちゃんに話した。
3年前の夏希と桐ちゃんのことを。
「そんなことがあったんですか…
でも、桐島先生は陽菜さん達が卒業してすぐに、
他の学校に行っちゃいましたよね?」
そんなこと、みんな分かってる。
ただ、夏希だけは知らないんだ。
「桐ちゃん、夏希にだけは言わなかったんだ。
3年前、今より格好良くなったら帰って来る、
そう言ってどっかに行った。
桐ちゃんは自分を信じて、
3年後に帰ってこれるようにって。
だから、私たちも分からないんだ。
今日、桐ちゃんが約束の場所にいるのか。」
俺に代わって陽菜ちゃんが言う。
そう。陽菜ちゃんの言った通り。
俺も、陽菜ちゃんも、陸も分からない。
桐ちゃんが帰ってきてるのかどうか。
朝子ちゃんが切なさそうな顔をする。
みんな、不安でならなかった。
桐ちゃんと夏希が再会してることを願う。
それしか、俺たちにはできなかった。
桐ちゃん
頼むよ。絶対、帰って来ててよ。
◆仁目線 終◆