叶ったはずの恋。
『別に泣いてもいいじゃないですか。
我慢してもなんの得にもなりませんよ?
夏希??』
大ちゃんがあたしの肩を抱き寄せた。
あたしは、都合のいい女だ。
こういうとき、優しい大ちゃんに頼ってしまう。
『僕は桐島先生みたいに格好良くはありません。
でも、夏希が桐島先生を思い出して、
淋しくなったとき、
辛くなったとき、
必ず傍にいます。
だからもっと、俺を見て…』
大ちゃんの口調が変わったことにも気づかず、あたしは泣いていた。
大ちゃんの腕の中で。
『俺は桐島先生より夏希のことが好きだって言える自信がある。
俺は絶対に夏希を泣かせたりしない。
夏希を、守ってみせる。
だから俺の彼女になって…』
大ちゃんの腕にほんの少し、力が入った。
桐ちゃんとは違う腕。
桐ちゃんとは違う温もり。
桐ちゃんとは違う人。
分かってた。そんなこと。
それなのに、あたしは
「…………いいよ」
大ちゃんの彼女になることを、
承諾してしまったのだ。