叶ったはずの恋。
「夏希!行くよ!!」
朝、陽菜が迎えに来る。
「今行くよー!」
と、叫んだあたしは階段を駆け下り玄関へ行く。
「兄貴、ちょっと行ってくる」
新聞を広げた兄貴の背中に声をかけた。
『大ちゃんに、よろしく言っといてな』
新聞からあたしに視線を逸らすことなく、兄貴は言った。
「陽菜、行こうか」
あたしたちは2人で家を出た。
「陽菜、何もかも変わってるよ」
「分かってるよ、そんなこと」
陽菜はあたしのほうを見てニヤッと笑う。
「大ちゃん、格好良くなってた?」
この質問にあたしは頷く。
「中ちゃんはおじさんオーラ出しまくりだった」
そんな冗談を言いながら3年前まで毎日歩いていた通学路を歩いていた。