叶ったはずの恋。





『俺、言ってやったよ。


「俺1人の人を愛すことにした」

って。


で、慶子が誰?って言ったから答えてやった。


「慶子…お前だよ」

って。


そしたらさ、慶子泣き出しちゃって。

あとで聞いたんだけど嬉しくて泣いたらしいんだ。


慶子と俺は3年くらい付き合ってたんかなぁ…

ある日、慶子と連絡取れなくなって。


俺は慶子の家に訪ねて行った。

アイツ、アパートに独り暮らしで。


インターフォン押しても出て来ないんだ。


でも、部屋の電気がついてて。

何かあったんだ、って思った。


いくら待っても出てきてくれなくてさ。

毎日家を訪ねた。


どれくらい通ったんだろ…


2週間くらいかな?

家の表札が取れてて、管理人さんに聞いたら


「今日、引っ越しされましたよ?」

とか、言われちゃって。


俺、訳分かんなくて慶子の実家まで行ったよ。


で、なんて言われたと思う?』


分からなくてあたしは首を振る。


大ちゃんは苦しそうに顔を歪めて言った。






『もうあなたには逢いたくない』









< 57 / 132 >

この作品をシェア

pagetop