叶ったはずの恋。
そして大ちゃんは声を震わしながら続きを話し始めた。
『慶子…俺の顔を見た途端、玄関のドアを閉めようとした。
今ここで慶子と話をしなきゃ一生話せない気がしてさ。
俺、ギリギリのところで慶子の腕を掴んだ。
そしたらアイツ、なぜだか震えててしかも泣いてんの。
「……やめて」
慶子、震える声で俺に言うんだ。
「離して」「触れないで」って。
俺、慶子のこと安心させてやりたくて抱きしめようと思った。
なのに、アイツは泣きながら俺のことをすげぇー拒むんだ。
そしたら今度は俺に謝るし。
相変わらず声も体も震えてて。
俺ら2人とも、パニックだった。
今でも思うんだ。
俺がもっと、大人で冷静で強かったら、って。』
ピークに達したのか大ちゃんの声がつまった。
「大ちゃん。いいよ。本当にもう。
十分、分かったから。
続きはこれからいくらだって聞く時間ある。
だから今、そんなに焦って言う必要ないよ?」
それなのに大ちゃんは必死で言葉を発しようとしていて。
どうしてそんなに今、話したいのか分からなかった。
「って、大ちゃん…?!」