叶ったはずの恋。
さっきまで泣きながら座っていた大ちゃんがあたしを抱きしめた。
『俺…不安なんだ。
どうしてだか分からないけど、不安で仕方ない。
なぁ…夏希。
お前は桐島先生のモノじゃないよな?
俺の…俺のモノだよな??』
ぎゅっと大ちゃんの腕に力が入って。
声がか細く、いつもの大ちゃんのようではなかった。
「大丈夫。大丈夫だよ、大ちゃん
あたしは…桐ちゃんのじゃない。」
少しだけ胸が痛かった。
これはどう変えることもできない事実。
だけど、大ちゃんに惹かれつつあるのも事実だった。
大ちゃんはあたしの肩に顔を埋めてやっぱり続きを話し始めた。
『慶子さ、言うんだよ。
「男の人が怖い」
って。
「今ここにいるのはお前を襲った奴じゃない。
俺だ。俺なんだ」
って、必死で伝えた。
だけど慶子、首を振るんだ。
怖い…怖い…
って、泣きながら言ってさ。
俺、どうすることもできなくて。
時間をかけて慶子の傷を癒していこうと思った。
でも……
…アイツは俺の前から姿を消した』