叶ったはずの恋。




『どこにもいなくて。

慶子の親友も居場所を教えてくれなかった。


あとで噂に聞いたんだけど田舎でゆっくり傷を癒すことにしたらしい。


俺、あまりにショックで体調崩しちゃって。

それで入院まですることになってさ。


ただ、退院したときはもう全てが遅かった。

新学期が始まってて、
せっかく教員免許取ったのに無意味。


で、途方にくれてた俺の前に現れたのがこの学校の面接。


嬉しかったけど…なんか心の底から喜べない自分がいて。

慶子のことが…気になって仕方なかった。


ただ、意外に人って単純なんだよな。


複雑な心境で俺はこの学校に来た。


初めて出逢った桐島先生はすごくいい人で。

中村先生だって、明るくて好印象だった。


なんでも完ぺきにやりたい俺は生徒の名前も顔も前もって貰ってた資料で覚えてて。

裏の自分を隠せば俺はかなりうまくここで教師をやっていけたと思う。


慶子のことも、裏の自分と一緒に隠す自信だってあった。



なのに…それなのに…教室に入ると…お前がいて…』


大ちゃんは恥ずかしそうに言う。


あたしがどうしたの??






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