叶ったはずの恋。
オレンジ色の海
『長旅、ごくろうさま』
あたしたちの住んでいるところから海までは2時間くらいかかる。
やっと着いた海はもう夕日が傾き始め、青いはずの海がオレンジ色に染められていた。
春の海にはサーファーしかいなくて、静かな時間が流れた。
何を話すワケでもなく、
2人で横に並んで砂浜を歩く。
相変わらず大ちゃんの顔は堅くて。
変な胸騒ぎがした。
「大ちゃんさ、なんであたしなの?」
沈黙がどうしてもイヤで、あたしはそんなことを聞く。
『どうした?急に…』
大ちゃんの表情が緩む。
それでも立ち止まることはなくて。
あたしは小さな石を拾う。
「いや…なんかさ、こんな子どもと付き合ってていいのかな、って。
あたしなんかよりもっと大ちゃんに合った人、いるんじゃないのかな…みたいな?
なんか変なこと言って、ごめん」
拾った小石を海へ投げる。
少し沖の方で落ちた石はポチャンと音をたてて水面に波紋をつくる。
でもそれはすぐに波にかき消されて。
そんな様子を見つめながら大ちゃんは口を開く。
『俺がいいからいいんだ。
それに夏希はもう子どもじゃない。
立派な大人だよ』
大ちゃんは振り向き微笑む。
でもいつもの爽やか笑顔なんかじゃなくて。
無理しているように感じた。