悪魔な君に恋をして




すっかり捨て猫の事など忘れた私は
あまりの恐怖に息をするのも忘れる。




でも、すぐに





『く、黒澤くん…??』




悪魔の正体に気づいてしまった。






間違いない。彼は黒澤くんだ。

あの鋭い切れ長の瞳、横顔だけど
たしかにあの人は隣の席の黒澤くん。




黒澤くんは私に名前を呼ばれると
首を傾けながら私をじっと見つめてくる。


隣にいる人も気づいたのか
私にギロリと黒澤くんにも
負けない視線を向けてきた。



こんな時に思うことじゃないと思うけど
黒い雲から降る雨に打たれた2人は
人間と感じさせないほど綺麗で神秘的で
私はついボーッと見惚れてしまった。




でもすぐに黒澤くんじゃない人が
目にも見えぬ速さで私の前に現れて
私の前に片手をかざしてきた。



私は何をされてるのか考える前に
スッーと意識と呼吸が遠くなるのを
感じながら


ただ目の前にいる無表情の綺麗な男の人を
じっと見つめていた。






このまま、死んじゃってもいいかも…





そう思った瞬間、目の前の男の人が
横に吹っ飛び、代わりになぜか倒れる私の体を
黒澤くんが受け止めてくれた。



ぎゅっ



うん、やっぱり黒澤くんだ。
だってこの甘くて切ない香りは黒澤くん
だけのものだもん。




私も抱きしめ返したいけど
不思議とカラダに力が入らない。

できるのは呼吸だけ。



まるで金縛りにかかってるみたい。




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