Time Paradox
ちょうどその時、誰かが部屋をノックする音が聞こえた。
隠し通路の入り口を見られてはいけないのだ。
リリアーナは仕方なしに返事をし、ドアを開ける。
「アドルフ?」
「ハンナ様、突然すみません。僕の父上を見かけませんでしたか?…見るわけがありませんよね。」
「えぇ、見てないわ。そんな事よりちょうど良かったわ、アドルフ!」
リリアーナはそう言うと、アドルフの腕を勢いよく引っ張った。
「な、何するんですか?」
アドルフは勢いでリリアーナの部屋に入れられると、ドアが閉まる。
リリアーナは声を潜め、怪しい顔で言った。
「今から隠し通路の探検をしましょう?」
アドルフはぎょっとした顔で言った。
「ど、どういうつもりですか!僕は父上に用があるんです!」
リリアーナは自分の口に人差し指を当て、アドルフを黙らせた。
「いいから付いてきて!音を立てちゃだめよ?」
アドルフはそれ以上は何も言わず、黙ってリリアーナに引っ張られた。
リリアーナはドレスのたくさん入ったクローゼットの扉を開けると、ハンガーに掛かったドレスを押し退けて中へ入り、アドルフが扉を閉める。
リリアーナは狭いクローゼットの中でランタン型の懐中電灯を拾うと、魔法で火を付けた。
クローゼットの奥はただの石造りの壁。
だがその壁の右端を強い力で押すと、壁が回る仕組みになっている。
壁を回して中に入ると、そこには石で出来た古い通路が続いていた。
通路は2人がやっとの事で並んで通れる程度の幅で、曲がり角が多かったり二手に分かれていたりと複雑な造りだった。
「…こんなの、地図があっても迷わず行けないわ!」
「…本当に。よく僕達もこんなので地図なんて作りましたよね。」
2人は地図を片手にそんなことを話していると、階段に差し掛かった。
「ハンナ様、足元にお気をつけて。」
「ありがとう。」
アドルフは6年前よりも大人になり、そんな気遣いまで出来るようになっていた。
2人は階段を降りて行くと、道が二手に分かれた。
「地図の通りに行くと右がA、左がRって書いてあるわ…」
「…Aはたしか、アンドレス大臣で、Rが…」
「レイモンド伯爵だわ!」
「あぁ!そうでしたね!ですが、どうなさいます?」
2人の間に沈黙が流れる。
どちらに行っても、特別面白い事はないだろう。
「…だけどもしかしたら…大臣は噂好きって言うから、何か聞くことが出来るかも!」
「アンドレス大臣はそんな人なんですか?」
「あ、別にアンドレス大臣に決まったことじゃなくってね…ただ、みんなよく大臣同士で話してるのを聞くらしいの。」
「それなら行ってみる価値はありますね!」
2人は静かに右側の道に進む。
するとさらに何段か階段を降り、突き当たりの扉に出ると、そこからは誰かの話し声が聞こえた。
リリアーナとアドルフは黙って耳をそばだてると、会話の内容まではっきりと聞き取ることが出来るようだ。
「あぁ。ケインズ一家が復活したわけでもないし、きっと制限も今まで通りだろうな。…はぁ、あの頃は良かったなぁ。」
「…そんなこと言ったってエドモンド様が戻ってくるわけではなかろう。それにハンナ様を探す必要もなくなったんだから、魔法の制限も緩くなるんじゃないか?」
「それもそうだな。だが貿易は…どうなるか分からんなぁ。」
「…なぜマーカス様は貿易国の制限をなさったのか…よく分からんなぁ。」
「まぁ我々が考える事でもあるまい。」
「それもそうだな、お喋りはここら辺にして残りの仕事を片づけるか。」
「あぁ。それじゃあ、また。」
そう言ってアンドレス大臣でない方の大臣が部屋を出て行ったのか、扉が閉まる音が聞こえた。
隠し通路の入り口を見られてはいけないのだ。
リリアーナは仕方なしに返事をし、ドアを開ける。
「アドルフ?」
「ハンナ様、突然すみません。僕の父上を見かけませんでしたか?…見るわけがありませんよね。」
「えぇ、見てないわ。そんな事よりちょうど良かったわ、アドルフ!」
リリアーナはそう言うと、アドルフの腕を勢いよく引っ張った。
「な、何するんですか?」
アドルフは勢いでリリアーナの部屋に入れられると、ドアが閉まる。
リリアーナは声を潜め、怪しい顔で言った。
「今から隠し通路の探検をしましょう?」
アドルフはぎょっとした顔で言った。
「ど、どういうつもりですか!僕は父上に用があるんです!」
リリアーナは自分の口に人差し指を当て、アドルフを黙らせた。
「いいから付いてきて!音を立てちゃだめよ?」
アドルフはそれ以上は何も言わず、黙ってリリアーナに引っ張られた。
リリアーナはドレスのたくさん入ったクローゼットの扉を開けると、ハンガーに掛かったドレスを押し退けて中へ入り、アドルフが扉を閉める。
リリアーナは狭いクローゼットの中でランタン型の懐中電灯を拾うと、魔法で火を付けた。
クローゼットの奥はただの石造りの壁。
だがその壁の右端を強い力で押すと、壁が回る仕組みになっている。
壁を回して中に入ると、そこには石で出来た古い通路が続いていた。
通路は2人がやっとの事で並んで通れる程度の幅で、曲がり角が多かったり二手に分かれていたりと複雑な造りだった。
「…こんなの、地図があっても迷わず行けないわ!」
「…本当に。よく僕達もこんなので地図なんて作りましたよね。」
2人は地図を片手にそんなことを話していると、階段に差し掛かった。
「ハンナ様、足元にお気をつけて。」
「ありがとう。」
アドルフは6年前よりも大人になり、そんな気遣いまで出来るようになっていた。
2人は階段を降りて行くと、道が二手に分かれた。
「地図の通りに行くと右がA、左がRって書いてあるわ…」
「…Aはたしか、アンドレス大臣で、Rが…」
「レイモンド伯爵だわ!」
「あぁ!そうでしたね!ですが、どうなさいます?」
2人の間に沈黙が流れる。
どちらに行っても、特別面白い事はないだろう。
「…だけどもしかしたら…大臣は噂好きって言うから、何か聞くことが出来るかも!」
「アンドレス大臣はそんな人なんですか?」
「あ、別にアンドレス大臣に決まったことじゃなくってね…ただ、みんなよく大臣同士で話してるのを聞くらしいの。」
「それなら行ってみる価値はありますね!」
2人は静かに右側の道に進む。
するとさらに何段か階段を降り、突き当たりの扉に出ると、そこからは誰かの話し声が聞こえた。
リリアーナとアドルフは黙って耳をそばだてると、会話の内容まではっきりと聞き取ることが出来るようだ。
「あぁ。ケインズ一家が復活したわけでもないし、きっと制限も今まで通りだろうな。…はぁ、あの頃は良かったなぁ。」
「…そんなこと言ったってエドモンド様が戻ってくるわけではなかろう。それにハンナ様を探す必要もなくなったんだから、魔法の制限も緩くなるんじゃないか?」
「それもそうだな。だが貿易は…どうなるか分からんなぁ。」
「…なぜマーカス様は貿易国の制限をなさったのか…よく分からんなぁ。」
「まぁ我々が考える事でもあるまい。」
「それもそうだな、お喋りはここら辺にして残りの仕事を片づけるか。」
「あぁ。それじゃあ、また。」
そう言ってアンドレス大臣でない方の大臣が部屋を出て行ったのか、扉が閉まる音が聞こえた。