Time Paradox
2人は黙ってさっき来た道を引き返した。
「やはり魔法と貿易の制限にみんな不満を持っているようですね。」
「えぇ、アーノルド家の人達も困ってたわ。あの家は貿易商だから。」
アドルフは頷くと、難しい顔をした。
「…しかし、僕も父上の事ですが全く理解できません。どうして貿易相手国が一つしかないのか…それもあの小さなアリティア王国とですよ。あ、アリティア王国はつい最近、アングリア王国と一つになって広くなりましたね。」
「そうなの?それっていつの話?」
「おそらくハンナ様がこちらに戻って来られる数ヶ月前ですね。」
「へぇえ、そんな事があったなんて!それでも、マーカス様が国王になったのなんてアリティア王国がまだ比較的小さい国だった頃の話よね?」
「…そうなんです、だからますます分からなくて。聞いた話では、何か個人的な理由からではないかって話ですよ。でも、国王として政治と公私混同するなんてどうかと思いますけどね?」
アドルフは、自分の父親のマーカスに対してと言うより国王としてのマーカスに不満があるようだ。
「…でも、一体どんな理由があるのかしらね?」
「きっと父上は聞いても教えてくれませんよ。たとえ僕の頼みでも、政治の事が絡むと頑固なんです。そんな父上がなぜハンナ様と僕の婚約は認めてくれたのかと言うと、僕の頼みは父上にとって私情寄りだったからでしょう。
大体の王家の結婚は政略結婚で、自由にしてもいいものではありません。
しかしこの国の王家にはそのような決まりはなく、父上は自由にしていいと言っておりましたから、どちらかと言うと個人的なものなのです。」
「…ふぅん。つまり、父親としてはアドルフに甘いけど、国王としては自分の意見を曲げたくない、ってところかしら?」
「そういうことです。だから大臣達も大変でしょうね、父上の参加する会議なんかでは。」
アドルフはそう言って苦笑いした。
2人はリリアーナの部屋に続く扉の前まで来たところで、誰かの足音を耳にした。
2人は顔を見合わせ、足音を立てずに様子を見に行くことにした。
曲がり角から顔を覗かせると、そこには痩せた男の姿があった。
それは何を隠そう、アドルフの家庭教師であるルイス・エドワードなのである。
ありがたいことにルイスは2人に全く気が付かず、そのまま違う道に入って行ったようだ。
2人はまた静かに部屋へと戻って行った。
「やはり魔法と貿易の制限にみんな不満を持っているようですね。」
「えぇ、アーノルド家の人達も困ってたわ。あの家は貿易商だから。」
アドルフは頷くと、難しい顔をした。
「…しかし、僕も父上の事ですが全く理解できません。どうして貿易相手国が一つしかないのか…それもあの小さなアリティア王国とですよ。あ、アリティア王国はつい最近、アングリア王国と一つになって広くなりましたね。」
「そうなの?それっていつの話?」
「おそらくハンナ様がこちらに戻って来られる数ヶ月前ですね。」
「へぇえ、そんな事があったなんて!それでも、マーカス様が国王になったのなんてアリティア王国がまだ比較的小さい国だった頃の話よね?」
「…そうなんです、だからますます分からなくて。聞いた話では、何か個人的な理由からではないかって話ですよ。でも、国王として政治と公私混同するなんてどうかと思いますけどね?」
アドルフは、自分の父親のマーカスに対してと言うより国王としてのマーカスに不満があるようだ。
「…でも、一体どんな理由があるのかしらね?」
「きっと父上は聞いても教えてくれませんよ。たとえ僕の頼みでも、政治の事が絡むと頑固なんです。そんな父上がなぜハンナ様と僕の婚約は認めてくれたのかと言うと、僕の頼みは父上にとって私情寄りだったからでしょう。
大体の王家の結婚は政略結婚で、自由にしてもいいものではありません。
しかしこの国の王家にはそのような決まりはなく、父上は自由にしていいと言っておりましたから、どちらかと言うと個人的なものなのです。」
「…ふぅん。つまり、父親としてはアドルフに甘いけど、国王としては自分の意見を曲げたくない、ってところかしら?」
「そういうことです。だから大臣達も大変でしょうね、父上の参加する会議なんかでは。」
アドルフはそう言って苦笑いした。
2人はリリアーナの部屋に続く扉の前まで来たところで、誰かの足音を耳にした。
2人は顔を見合わせ、足音を立てずに様子を見に行くことにした。
曲がり角から顔を覗かせると、そこには痩せた男の姿があった。
それは何を隠そう、アドルフの家庭教師であるルイス・エドワードなのである。
ありがたいことにルイスは2人に全く気が付かず、そのまま違う道に入って行ったようだ。
2人はまた静かに部屋へと戻って行った。