Time Paradox
「…それにしても、政治については頑固な父上がなぜあのルイスの思うように政治を進めているのでしょうか…」
そう言ったアドルフの目は、失望そのものだった。
「…なにか弱みを握られているとか?」
リリアーナは控えめに言うと、アドルフは一層やりきれないような顔になった。
「父上は国王に即位してから、アリティア王国が有利になるような条約を結んだんです。
僕はてっきり、父上の考えで祖国であるアリティア王国を守ろうとしていたのかと思っていましたが…あの言い方だと、今までもずっとルイスの言う通りに政治を動かしていたということでしょうね。」
「…でもどうしてルイスはアリティア王国の事を守ろうとしてるのかしら?だって全然関係ないのに…」
「そこが分からないところなんです。」
2人はいかにも考え深そうにため息をつく。
「新たな謎が生まれましたね。」
「えぇ。これが解けないうちは過去には行けないかも。誰をどうしたらいいのかがわからないわ。」
「…そうですね。」
リリアーナが窓の外を見ると、もうとっくに日は落ちていた。
「…そういえばこの地図、まだ完成形ではありませんでしたね。」
ずっと地図に目を落としていたアドルフが顔を上げて言う。
「そうだったわ!過去に行くまでこれを完成させなければいけないわ。」
アドルフも頷いた。
「この地図ではまだ一階がよく分かっていませんから。外に通じる道もあるはずなのですが…」
「…あの日が来てしまってそれを見つけられなかった。」
リリアーナは静かな声で言った。
「…でもあの日、私は隠し通路を通って外に出たの。おじいさんが案内してくれて…」
「…おじいさん?なぜその方は隠し通路の事を…?」
アドルフは怪訝そうな顔で聞く。
「…私もそのおじいさんの正体は知らないの。でもそのおじいさん、国のためにもあなただけは生きててくださいって言ったの。全然知らない人だったけど、不思議と不安はなかったわ。…それに助かるためにもそれしかなかったから。」
「…なるほど。そういえばアリティア王国の新国王とその王妃も、同じような事を言っていたような…」
「おじいさんのこと?」
「はい。妙に身なりのきちんとした、紳士というに相応しい老人だったと…そんな人が自分達を救ってくれたんだと言っていました。」
「…一体どんな人なのかしら?」
「近いうちにアリティア王国の国王王妃とお会いする事ができるはずですが…」
「そうなの!それじゃあ聞かせてもらいましょう?」
「そうですね。たしか予定では…明後日ですね!」
「明後日⁉︎なんてタイミングがいいのかしら!明日はアーノルド家でジャックの持ってきてくれた絵本を確認して、明後日は2人におじいさんの事を聞く!完璧だわ!」
リリアーナは嬉しそうに手を叩くと、立ち上がった。
「夕食が終わったら調べなきゃ!」
「何をですか?」
「決まってるじゃない!隠し通路の完璧な地図を作るのよ!」
そう言ってリリアーナはドアノブに手をかけた。
そう言ったアドルフの目は、失望そのものだった。
「…なにか弱みを握られているとか?」
リリアーナは控えめに言うと、アドルフは一層やりきれないような顔になった。
「父上は国王に即位してから、アリティア王国が有利になるような条約を結んだんです。
僕はてっきり、父上の考えで祖国であるアリティア王国を守ろうとしていたのかと思っていましたが…あの言い方だと、今までもずっとルイスの言う通りに政治を動かしていたということでしょうね。」
「…でもどうしてルイスはアリティア王国の事を守ろうとしてるのかしら?だって全然関係ないのに…」
「そこが分からないところなんです。」
2人はいかにも考え深そうにため息をつく。
「新たな謎が生まれましたね。」
「えぇ。これが解けないうちは過去には行けないかも。誰をどうしたらいいのかがわからないわ。」
「…そうですね。」
リリアーナが窓の外を見ると、もうとっくに日は落ちていた。
「…そういえばこの地図、まだ完成形ではありませんでしたね。」
ずっと地図に目を落としていたアドルフが顔を上げて言う。
「そうだったわ!過去に行くまでこれを完成させなければいけないわ。」
アドルフも頷いた。
「この地図ではまだ一階がよく分かっていませんから。外に通じる道もあるはずなのですが…」
「…あの日が来てしまってそれを見つけられなかった。」
リリアーナは静かな声で言った。
「…でもあの日、私は隠し通路を通って外に出たの。おじいさんが案内してくれて…」
「…おじいさん?なぜその方は隠し通路の事を…?」
アドルフは怪訝そうな顔で聞く。
「…私もそのおじいさんの正体は知らないの。でもそのおじいさん、国のためにもあなただけは生きててくださいって言ったの。全然知らない人だったけど、不思議と不安はなかったわ。…それに助かるためにもそれしかなかったから。」
「…なるほど。そういえばアリティア王国の新国王とその王妃も、同じような事を言っていたような…」
「おじいさんのこと?」
「はい。妙に身なりのきちんとした、紳士というに相応しい老人だったと…そんな人が自分達を救ってくれたんだと言っていました。」
「…一体どんな人なのかしら?」
「近いうちにアリティア王国の国王王妃とお会いする事ができるはずですが…」
「そうなの!それじゃあ聞かせてもらいましょう?」
「そうですね。たしか予定では…明後日ですね!」
「明後日⁉︎なんてタイミングがいいのかしら!明日はアーノルド家でジャックの持ってきてくれた絵本を確認して、明後日は2人におじいさんの事を聞く!完璧だわ!」
リリアーナは嬉しそうに手を叩くと、立ち上がった。
「夕食が終わったら調べなきゃ!」
「何をですか?」
「決まってるじゃない!隠し通路の完璧な地図を作るのよ!」
そう言ってリリアーナはドアノブに手をかけた。