Time Paradox
リリアーナが階段を降り、アドルフもそれに続く。
「あのおじいさんが私をここから救ってくれた時、隠し通路で行き止まりに差し掛かった事を思い出したのよ!
私ももうダメかと思ったけど、おじいさんは冷静にあの壁を回したの!ここから先は道なりに行けば城の外に出るはずよ。」
それから2人は、枝分かれしていない単純な通路を進んでいった。
そしてそう歩かずに、急な登りの階段が現れた。
2人はその階段をゆっくり登り、マンホールの蓋のような天井を押し開けた。
恐る恐る外を覗いてみると、そこはモンフォワーシュの夜の街だった。
2人は一瞬どこにいるのか分からなかったが、すぐにそこが城の横を流れるアーニャ川の近くだという事が分かった。
2人は誰も見ていないうちに引き返し、すぐに蓋を閉じた。
「それであの時、アーニャ川を下って駅まで行ったの。思い出したわ!」
「なるほど、その紳士はすごく賢い魔法使いなのですね。」
「そうなのかもしれないわ。でもあのおじいさん、何者なのかしら…?」
「王家の秘密である隠し通路を知り尽くしているとは…とりあえずアリティア王国のお二人に聞いてみるしかありませんね。」
「…そうね。地図もひとまず完成したし、これからは逃げたくなったらいつでも外に出られるわね!」
リリアーナはそう言っていたずらっぽく笑った。
アドルフはそんなリリアーナの様子に呆れた顔を見せたが、今度は何かを閃いたのか、グレーの瞳をキラキラさせた。
「どうしたの?」
「この道を使って外に出れば、ジャック様と情報交換することができるのでは?」
その言葉にリリアーナの胸は高鳴った。
「それだけじゃないわ!ここから森は近いし、城の敷地外に出られるはずだから、準備ができ次第いつでも過去に行けるわよ!」
「…もしよろしければ、ハンナ様が過去へ行く時、僕もご一緒したいのですが…」
アドルフが言いにくそうに言うと、リリアーナは当然のことのように言う。
「私は今まで、アドルフがついてくる前提で話を進めてたつもりなんだけど…」
「本当ですか⁉︎ありがとうございます!」
アドルフはさっきよりも嬉しそうに瞳を輝かせた。
さっき通った行き止まりの壁を慎重に回すと、そこから2人は無言で音を立てずに歩いた。
ここから先は、いつどこにルイスが潜んでいるか分からないからである。
2人は無事、誰にも会わずにリリアーナの部屋の隠し扉を回すことができた。
リリアーナの部屋には今、誰も居ないのが当然だが、2人はそれを確認してクローゼットを開けた。
クローゼットの中からリリアーナの部屋へ戻ると、部屋の照明の眩しさに目が痛くなった。
リリアーナが目を細めながらもアドルフの方を見ると、アドルフも同じような顔をしていた。
だがその表情には、達成感のようなものも見て取れる。
「…明日が楽しみね。」
リリアーナはニヤニヤしないように顔を作ったが、上手くいかないようだ。
「ハンナ様、明日は昼前に出発になりますから、今日はそろそろお休みになられた方が良いのでは?」
「そうするわ。アドルフもゆっくり休んでね。おやすみなさい。」
「おやすみなさい、ハンナ様。」
アドルフはそう言うとドアノブに手をかけ、もう一度リリアーナの方を振り返ってから部屋を後にした。
「あのおじいさんが私をここから救ってくれた時、隠し通路で行き止まりに差し掛かった事を思い出したのよ!
私ももうダメかと思ったけど、おじいさんは冷静にあの壁を回したの!ここから先は道なりに行けば城の外に出るはずよ。」
それから2人は、枝分かれしていない単純な通路を進んでいった。
そしてそう歩かずに、急な登りの階段が現れた。
2人はその階段をゆっくり登り、マンホールの蓋のような天井を押し開けた。
恐る恐る外を覗いてみると、そこはモンフォワーシュの夜の街だった。
2人は一瞬どこにいるのか分からなかったが、すぐにそこが城の横を流れるアーニャ川の近くだという事が分かった。
2人は誰も見ていないうちに引き返し、すぐに蓋を閉じた。
「それであの時、アーニャ川を下って駅まで行ったの。思い出したわ!」
「なるほど、その紳士はすごく賢い魔法使いなのですね。」
「そうなのかもしれないわ。でもあのおじいさん、何者なのかしら…?」
「王家の秘密である隠し通路を知り尽くしているとは…とりあえずアリティア王国のお二人に聞いてみるしかありませんね。」
「…そうね。地図もひとまず完成したし、これからは逃げたくなったらいつでも外に出られるわね!」
リリアーナはそう言っていたずらっぽく笑った。
アドルフはそんなリリアーナの様子に呆れた顔を見せたが、今度は何かを閃いたのか、グレーの瞳をキラキラさせた。
「どうしたの?」
「この道を使って外に出れば、ジャック様と情報交換することができるのでは?」
その言葉にリリアーナの胸は高鳴った。
「それだけじゃないわ!ここから森は近いし、城の敷地外に出られるはずだから、準備ができ次第いつでも過去に行けるわよ!」
「…もしよろしければ、ハンナ様が過去へ行く時、僕もご一緒したいのですが…」
アドルフが言いにくそうに言うと、リリアーナは当然のことのように言う。
「私は今まで、アドルフがついてくる前提で話を進めてたつもりなんだけど…」
「本当ですか⁉︎ありがとうございます!」
アドルフはさっきよりも嬉しそうに瞳を輝かせた。
さっき通った行き止まりの壁を慎重に回すと、そこから2人は無言で音を立てずに歩いた。
ここから先は、いつどこにルイスが潜んでいるか分からないからである。
2人は無事、誰にも会わずにリリアーナの部屋の隠し扉を回すことができた。
リリアーナの部屋には今、誰も居ないのが当然だが、2人はそれを確認してクローゼットを開けた。
クローゼットの中からリリアーナの部屋へ戻ると、部屋の照明の眩しさに目が痛くなった。
リリアーナが目を細めながらもアドルフの方を見ると、アドルフも同じような顔をしていた。
だがその表情には、達成感のようなものも見て取れる。
「…明日が楽しみね。」
リリアーナはニヤニヤしないように顔を作ったが、上手くいかないようだ。
「ハンナ様、明日は昼前に出発になりますから、今日はそろそろお休みになられた方が良いのでは?」
「そうするわ。アドルフもゆっくり休んでね。おやすみなさい。」
「おやすみなさい、ハンナ様。」
アドルフはそう言うとドアノブに手をかけ、もう一度リリアーナの方を振り返ってから部屋を後にした。