Time Paradox
憧憬
階段を降りるとすぐに、舞踏室で行われている煌びやかなパーティーの音楽が聞こえてくる。
デイジーはそっと舞踏室へ入ると、何かあった時にはすぐに駆けつけられるよう、壁際に立っていた。
まるで宮殿のような広い舞踏室で、着飾った貴族達が優雅に踊っている。
他にも、食事を楽しむ者や談笑する者、アドルフとリリアーナに挨拶をしに行く者など、思い思いにパーティーを楽しんでいる。
アーノルド家の人間はというと、また別の屋敷からやって来たであろう貴族達と踊っている。
だが、なぜかルーカスだけは壁を背にして立っているではないか。
デイジーは気になって様子を見ていると、ルーカスは自分から誘いに行かないだけでなく、女性から誘われても断っていたのだ。
「デイジーちゃん、ちょっと人手が足りないから運ぶの手伝ってくれない?」
デイジーはその声で我に返る。
デイジーを呼んだのは、食事などの担当をするお手伝いのおばさんだ。
デイジーは頷いて何皿もの料理を受け取ると、テーブルの上に並べていく。
「済んだお皿も持ってきてね。」
「あ、はい!」
デイジーは空になった皿を重ねて調理場へと持っていく。
こういった屋敷でも仕事が分散されていて、デイジーは城で言う侍女とメイドを併せたような役割を、デイジーを呼んだおばさんは掃除やパーティの準備などのあらゆる仕事、いわゆる雑用係のような仕事をし、料理人は調理場で働いている。
だが人の集まるパーティーなどではいつも人手不足で、今のように手伝いを頼まれる事が多いのだ。
以前ワイングラスの処理をしに行くのが遅れてデリックに怒られた時も、今のように手伝いを頼まれていたのだ。
デイジーはため息を吐きたい気持ちになりながらも、人目を気にして気を引き締める。
また空いた皿を持って調理場へ行くと、料理人がデイジーに料理を渡して言った。
「あとはこっちでやるから大丈夫だよ。手伝ってくれてありがとね。」
「いえいえ!また何かあったら言ってください。」
料理人のおじさんはまた持ち場に戻り、デイジーも料理を会場に運んだ。
デイジーは仕事が終わると、また目立たないような壁際で待機していた。
相変わらずルーカスも一人で、退屈そうにパーティーを眺めていた。
「…デイジーちゃん、悪いんだけどお粥を…」
「あ、分かりました!」
デイジーはお盆ごとお粥を受け取ると、モーリスの部屋へと向かった。
前回のパーティーでは、モーリスの部屋を出たところをリリアーナに見つかってしまったのだ。
だか当然ながら今回は誰もいないようで、デイジーはそっと扉を開けてモーリスの部屋へと入った。
「失礼します。」
そう言うと、モーリスの部屋のテーブルにお粥を置く。
「…いつも悪いな…」
モーリスは起き上がると、デイジーの手を借りてソファーまで移動し、ゆっくりと腰を下ろした。
「…私もだいぶ良くなってきたように思えるな。」
「そのようですね、ここ数日で見違えるように回復されていますから!」
「あぁ…ハンナ様のお陰だな。この家の仲が元に戻ったことで治ってきたようだ。」
「大きな心配事があると体調を崩しますからね。きっと過去に行く頃には完治していますよ。」
「…あぁ、そうなる事を祈るよ。」
モーリスはそう言って微笑むと、お粥を食べ始めた。
デイジーは「失礼します」とだけ言い、お辞儀をして部屋を後にした。
デイジーはそっと舞踏室へ入ると、何かあった時にはすぐに駆けつけられるよう、壁際に立っていた。
まるで宮殿のような広い舞踏室で、着飾った貴族達が優雅に踊っている。
他にも、食事を楽しむ者や談笑する者、アドルフとリリアーナに挨拶をしに行く者など、思い思いにパーティーを楽しんでいる。
アーノルド家の人間はというと、また別の屋敷からやって来たであろう貴族達と踊っている。
だが、なぜかルーカスだけは壁を背にして立っているではないか。
デイジーは気になって様子を見ていると、ルーカスは自分から誘いに行かないだけでなく、女性から誘われても断っていたのだ。
「デイジーちゃん、ちょっと人手が足りないから運ぶの手伝ってくれない?」
デイジーはその声で我に返る。
デイジーを呼んだのは、食事などの担当をするお手伝いのおばさんだ。
デイジーは頷いて何皿もの料理を受け取ると、テーブルの上に並べていく。
「済んだお皿も持ってきてね。」
「あ、はい!」
デイジーは空になった皿を重ねて調理場へと持っていく。
こういった屋敷でも仕事が分散されていて、デイジーは城で言う侍女とメイドを併せたような役割を、デイジーを呼んだおばさんは掃除やパーティの準備などのあらゆる仕事、いわゆる雑用係のような仕事をし、料理人は調理場で働いている。
だが人の集まるパーティーなどではいつも人手不足で、今のように手伝いを頼まれる事が多いのだ。
以前ワイングラスの処理をしに行くのが遅れてデリックに怒られた時も、今のように手伝いを頼まれていたのだ。
デイジーはため息を吐きたい気持ちになりながらも、人目を気にして気を引き締める。
また空いた皿を持って調理場へ行くと、料理人がデイジーに料理を渡して言った。
「あとはこっちでやるから大丈夫だよ。手伝ってくれてありがとね。」
「いえいえ!また何かあったら言ってください。」
料理人のおじさんはまた持ち場に戻り、デイジーも料理を会場に運んだ。
デイジーは仕事が終わると、また目立たないような壁際で待機していた。
相変わらずルーカスも一人で、退屈そうにパーティーを眺めていた。
「…デイジーちゃん、悪いんだけどお粥を…」
「あ、分かりました!」
デイジーはお盆ごとお粥を受け取ると、モーリスの部屋へと向かった。
前回のパーティーでは、モーリスの部屋を出たところをリリアーナに見つかってしまったのだ。
だか当然ながら今回は誰もいないようで、デイジーはそっと扉を開けてモーリスの部屋へと入った。
「失礼します。」
そう言うと、モーリスの部屋のテーブルにお粥を置く。
「…いつも悪いな…」
モーリスは起き上がると、デイジーの手を借りてソファーまで移動し、ゆっくりと腰を下ろした。
「…私もだいぶ良くなってきたように思えるな。」
「そのようですね、ここ数日で見違えるように回復されていますから!」
「あぁ…ハンナ様のお陰だな。この家の仲が元に戻ったことで治ってきたようだ。」
「大きな心配事があると体調を崩しますからね。きっと過去に行く頃には完治していますよ。」
「…あぁ、そうなる事を祈るよ。」
モーリスはそう言って微笑むと、お粥を食べ始めた。
デイジーは「失礼します」とだけ言い、お辞儀をして部屋を後にした。