Time Paradox
リリアーナは廊下に出ると、少し離れたところにいるジャックとイザベラの姿を見つけた。

なぜか二人は誰かの部屋を訪ねているようで、開いたドアの中にいる人物と話し込んでいる。


だがリリアーナの姿を見ると、目玉が飛び出るほど驚いていた。

「リリアーナ様!どこに行ってらしたんですか⁈」

「何してたんだよ⁈」


リリアーナは責め立てるような二人の勢いに圧倒され、しばらく何も言えなかった。


「…どこで…何してたっけ…?」


リリアーナは酔いが醒めたばかりの頭で記憶を巻き戻すと、やっと自分に非があることに気が付いた。

リリアーナは苦笑いを浮かべながら二人を自室に入れると、今までの経緯を話し始めた。

「私がイザベラの部屋から帰る途中、廊下の椅子で寝たのは確かなんだけど…」




リリアーナは全てを話すと、二人は難しい顔をしていた。

「やっぱりリリアーナ様が部屋に帰るまで私が送るべきだったんですよ…」

イザベラはそう言って大きくため息を吐いた。

「…いや、むしろ良かったんじゃないか?」

意地が悪いとも取れるジャックの言葉に、二人は軽く軽蔑の目を向けた。

「いや!そういう意味じゃない。たしかに毒を飲まされそうになったのは危険だった。でもそのおかげでだいぶ危険人物が絞られたじゃないか。」

「マーカス様じゃないアリティア王国出身者ってことよね?…でもおかしいと思わない?お城に住んでるような人が直々に暗殺を依頼しに来るなんて。」

「たしかにおかしいですわ!だってここ最近でこの屋敷にいらしたお城の方なんて、アドルフ様とリリアーナ様とその護衛の方々だけですもの。」

「その中で怪しいって言ったら…護衛の誰かってことだな。」

イザベラは頷いた。

「待って!でもどうしてお手伝いの…名前聞くのを忘れてしまったけど…あの子がアリティア王国出身者だって分かったのかしら?」

「彼女の名前はエラ・チューリッヒですわ。」

「エラ・チューリッヒね、覚えておかなくちゃ。でも、きっと誰がどこ出身なのかはお城に戻ればすぐに分かるは…」

リリアーナが言いかけた時、部屋の時計が12時を回り、オルゴールを鳴らした。

「大変!もうこんな時間ですわ!お肌のシンデレラタイムが…私はそろそろ失礼させていただきますわ!」

イザベラは切羽詰まったような顔で言うと、慌てて部屋を出て行った。


「俺もそろそろ戻るとするよ。お肌のシンデレラタイムとかって言うやつらしいし。」

ジャックはふざけながらそう言うと立ち上がり、急に真面目な顔になった。

「それから…あんまり心配かけるようなことするなよ。」

リリアーナは何か言おうと口を開いたが、言葉をまとめているうちにジャックは部屋を出て行ってしまった。
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