Time Paradox

この街の秘密

その日の帰り道、リリアーナの隣を歩くジャックの表情は、心なしか険しいように感じた。


「…ジャック、どうかした?」

リリアーナの問いかけに、はっとして顔を上げたジャックだが、首を横に振るばかりだった。


「ねぇ、私って明日からお城で働くのよね?」

「いや!…それは、まだなんだ。それが…まだ、分からない…。」

リリアーナの質問に大きな反応を見せたジャックだが、途中から歯切れが悪くなり、自信のない小さな声になっていった。


「ねぇジャック、本当に大丈夫なの?」

「…大丈夫。…明日、父さんに確認してみるよ。」

「…分かった、頼んだわ。」


何やら秘密の多そうなジャックに、リリアーナは不安を感じていた。


ジャックはリリアーナのアパートが目の前まで来ていた事に気が付かなかった。


「ジャック!」

「うわ!どうした⁈」

「どうしたって…私アパートに着いたんだけど…」

「…あぁ、俺もこのアパートだけどな。」

そう言ったジャックにリリアーナは目を丸くした。


「そんなの聞いてなかったわ!じゃあセドリックさんもここに住んでるのね!」

ジャックは、セドリックと言う言葉に一瞬表情が曇ったように見えた。

「あぁ。言ったつもりだったんだけど忘れてたかもな。」

そう言ってジャックは笑った。


ジャックの部屋は、リリアーナの部屋の隣の隣だった。


「じゃあ、おやすみなさい。」

「あぁ、おやすみ。」


2人は挨拶を交わし、互いの部屋へと戻って行った。
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