Time Paradox
それからというもの、ルーカスとデイジーの極秘レッスンが始まった。
アーノルド家の屋敷は寝静まっていたが、ひそひそとしたルーカスとデイジーの話し声だけが屋敷の玄関先に響いていた。
「デイジー、今夜はベルモンド家の屋敷で舞踏会があるみたいだ!」
「…もしかして…」
「あぁ。そっと庭に忍び込んで踊るんだ!」
ルーカスはいたずらっぽい笑顔を向けると、そっと玄関の扉を開け、デイジーに出るよう促した。
デイジーとルーカスは逃げるようにアーノルド家を後にした。
そして少し離れたベルモンド家まで歩き、門の前までたどり着いた。
「ベルモンド家の庭は美しいって評判なんだ。何でも、モンフォワーシュ1と謳われる城の庭師の弟子を雇っているからね。」
「…でも、本当にこの庭に忍び込むんですか?」
デイジーの手が震えている。
ルーカスはそんなデイジーを残し、一度高い塀の上に登った。
そしてデイジーの手を取ると、彼女を上から引き上げた。
やっとの事で屋敷の庭に降りると、さっきよりもはっきりと優雅なワルツが鳴り響いてくる。
少し憂いを帯びたメロディーに、2人は自然と手を取り合い、踊り始めた。
最初は遠慮がちに踊っていたデイジーだが、ルーカスのリードに乗っていくうち、ダンスを楽しむ余裕が生まれた。
やがて曲がクライマックスに達して盛り上がると、急にテンポを落として静かになり、曲が終わった。
2人がダンスを終えた後の挨拶を交わしていると、急に玄関の方から誰かの足音が近付いてきた。
1人ではないようだ。
2人は顔を見合わせると、足音を立てないよう静かに塀の近くまで走った。
だがその時、デイジーが足元に落ちていた金属のバケツを足で蹴ってしまい、庭にいた男2人の話し声が途切れた。
気付かれてしまったのだろう。
ルーカスとデイジーは2人から見えないよう木の裏の塀に登り、塀から路上に飛び降りると一目散に駆け出した。
「ベルモンド家に侵入者がいた!」
「やつらを追いかけろ!」
数メートル離れた背後からはそんな声が響いてきたが、2人は手を繋いで角を曲がると、少し走って路地裏に逃げ込んだ。
追っ手も角を曲がって走って来たが、2人の隠れている路地を通り過ぎて行った。
ルーカスは路地からちらりと顔をのぞかせ、デイジーにいたずらっぽい笑みを向けると、追っ手の男の後ろ姿に何か魔法をかけたようだ。
するとその男の履いていたズボンが尻の真ん中のところで裂け、慌てて男は辺りを見回していた。
「…ちょっと彼には悪いことをしてしまったな。」
ルーカスがふざけて言うと、2人は顔を見合わせて笑い、少しの間黙って見つめ合った。
そしてどちらからともなく顔を近づけていき、ゆっくりと唇を重ねた。
ルーカスは頰を赤らめているデイジーの顔を覗き込むと、今度はきつく抱き締めた。
そして騒ぎの収まった頃に路地の反対側から道に出ると、2人は仲良く手を繋ぎアーノルド家に帰宅した。
アーノルド家の屋敷は寝静まっていたが、ひそひそとしたルーカスとデイジーの話し声だけが屋敷の玄関先に響いていた。
「デイジー、今夜はベルモンド家の屋敷で舞踏会があるみたいだ!」
「…もしかして…」
「あぁ。そっと庭に忍び込んで踊るんだ!」
ルーカスはいたずらっぽい笑顔を向けると、そっと玄関の扉を開け、デイジーに出るよう促した。
デイジーとルーカスは逃げるようにアーノルド家を後にした。
そして少し離れたベルモンド家まで歩き、門の前までたどり着いた。
「ベルモンド家の庭は美しいって評判なんだ。何でも、モンフォワーシュ1と謳われる城の庭師の弟子を雇っているからね。」
「…でも、本当にこの庭に忍び込むんですか?」
デイジーの手が震えている。
ルーカスはそんなデイジーを残し、一度高い塀の上に登った。
そしてデイジーの手を取ると、彼女を上から引き上げた。
やっとの事で屋敷の庭に降りると、さっきよりもはっきりと優雅なワルツが鳴り響いてくる。
少し憂いを帯びたメロディーに、2人は自然と手を取り合い、踊り始めた。
最初は遠慮がちに踊っていたデイジーだが、ルーカスのリードに乗っていくうち、ダンスを楽しむ余裕が生まれた。
やがて曲がクライマックスに達して盛り上がると、急にテンポを落として静かになり、曲が終わった。
2人がダンスを終えた後の挨拶を交わしていると、急に玄関の方から誰かの足音が近付いてきた。
1人ではないようだ。
2人は顔を見合わせると、足音を立てないよう静かに塀の近くまで走った。
だがその時、デイジーが足元に落ちていた金属のバケツを足で蹴ってしまい、庭にいた男2人の話し声が途切れた。
気付かれてしまったのだろう。
ルーカスとデイジーは2人から見えないよう木の裏の塀に登り、塀から路上に飛び降りると一目散に駆け出した。
「ベルモンド家に侵入者がいた!」
「やつらを追いかけろ!」
数メートル離れた背後からはそんな声が響いてきたが、2人は手を繋いで角を曲がると、少し走って路地裏に逃げ込んだ。
追っ手も角を曲がって走って来たが、2人の隠れている路地を通り過ぎて行った。
ルーカスは路地からちらりと顔をのぞかせ、デイジーにいたずらっぽい笑みを向けると、追っ手の男の後ろ姿に何か魔法をかけたようだ。
するとその男の履いていたズボンが尻の真ん中のところで裂け、慌てて男は辺りを見回していた。
「…ちょっと彼には悪いことをしてしまったな。」
ルーカスがふざけて言うと、2人は顔を見合わせて笑い、少しの間黙って見つめ合った。
そしてどちらからともなく顔を近づけていき、ゆっくりと唇を重ねた。
ルーカスは頰を赤らめているデイジーの顔を覗き込むと、今度はきつく抱き締めた。
そして騒ぎの収まった頃に路地の反対側から道に出ると、2人は仲良く手を繋ぎアーノルド家に帰宅した。