Time Paradox
リリアーナはなぜか、駅のような場所にいた。

列車から漏れている明かりが石畳を照らしていた。

「ハンナ様、どうかあなただけは…!」

「でも私一人でどうしろって言うの⁈」

「あなたは生きているだけでいいのです!もう時間がないですよ!…いいですか、終点の駅で降りてくださいね!それから、ここを思い出して辛くならないよう、私があなたの記憶を預かっておきます。」

「私の記憶を…」

言いかけた所で汽笛が鳴り、声は遮られてしまった。


「さぁハンナ様!急いでお乗りください!」

そう言って男はハンナを列車に押し込み、発車寸前まで手を握っていた。

だが、だんだん見えていた世界がフェードアウトしていき、リリアーナは目を覚ました。


「…夢か。ハンナってあの絵本の主人公…?それにあの場所…どこかで見た気がする…」


リリアーナは考えていると、近い所にその記憶が仕舞ってある事に気付いた。


「つい最近…ちょうど、今日…。そうよ、今日行ったわ!モンフォワーシュ駅ね!」


リリアーナは思い出してすっきりしたが、なぜかその場所に行ってみようと考えた。


「孤児院にいる時はこんな時間に出歩くことはできなかったけど…今は何をしてもいいんだわ!
本当はハンナも、こんな夜に電車に乗ってどこかへ逃げたのかも…。」
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