Time Paradox
等間隔に並んだ外灯の光は不十分で、モンフォワーシュの街は眠っているようだった。


月明かりとわずかな外灯の光を頼りに、リリアーナは覚えたての道を辿る。


リリアーナはそれほど方向音痴と言うわけではなく、時間はかかったが無事目的地に辿り着くことができた。


「夜のモンフォワーシュ駅も綺麗だわ…でもさすがにこの時間帯に動いている列車なんてないわよね。」


そう呟いたリリアーナの目の前に、ワインレッドの列車が停車した。


「…だってもう2時過ぎなのに…」


だがしばらくして汽笛が鳴り、列車はゆっくりと動き出した。


リリアーナはだんだん加速していく列車を目で追っていると、信じられない光景を目の当たりにしてしまった。



「列車が…飛んでる…?」


列車はどんどん加速し、上へ上へと登って行った。


「こちらでは当たり前の事ですよ。」

リリアーナは驚いて後ろを振り返ると、小さくなっていく列車を見つめる年老りの男性が立っていた。


「…ハンナ様の時もそうでした。」


「…ハンナって…」


リリアーナはその名前が出てきた事を、偶然とは思えなかった。
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