Time Paradox
「ねぇ、イザベラさん!僕と踊りに行かない?」

予想外の誘いに一瞬戸惑ったイザベラだが、目の前の無邪気な二十代は正気である。

「…嬉しいんだけど…つまみ食いで左手が汚れてるわ。」

イザベラはそう言って淡いレースのハンカチを取り出すと、ナゲットをつまんだニコラスの左手を拭った。

ニコラスは嬉しそうにはにかむと、ホールの中心へとイザベラの手を引っ張った。

「…あの二人、お似合いだと思わない?」

ルクレツィアが微笑むと、ランスも頷いた。

「それで…何か話があるんでしょう?」

ルクレツィアが見透かすように見つめると、ランスは笑った。

「さすが、チューリッヒ家の人間は話が早いな。」

「私に遠くから目配せをしてきた時、何か意味ありげだったわ。場所を変えましょう?」

「あぁ、その方がお互いの為だな。」

そう言って二人は人気のない場所へと歩き出した。
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