Time Paradox
目立つ人物
デリックは苛立っていた。
落ち着かない様子で会場を出て行ったジャックが戻って来ないのはともかく。
デルーロ家の二男であり、本当の意味での不肖の息子、ニコラスとイザベラがまるで駆け落ちをしたかのように出て行ったきり、戻って来ないのである。
その少し前にはルクレツィアがデルーロ家の長男、ランスと共にどこかへ姿を眩ませている。
ルクレツィアの事は正直どうでもいいのだが、イザベラがどこかへ連れ去られたのかもしれないと思うと兄心としても心配である。
それに相手はあの遊び人だ。
パーティーも予定終了時刻まであと1時間を切っている。
デリックはイライラと長い脚を揺すりながら腕時計を見ていると、大きな扉が開かれた。
そこにはデルーロ家の不肖の息子にエスコートされる、淡いドレスに身を包んだ可愛らしい女性…イザベラがいたのだ。
会場にいる人の視線が皆、彼女を捉えていた。
「兄さん、あれって…それにイザベラ、どうして着替えてるんだ?」
ルーカスがデイジーと共に近付いてきたが、デリックはわけが分からず首を振るだけだった。
「イザベラ様、すごく素敵ですわ…」
デイジーまでもが呟いた。
ついさっきまでとても上品とは言いがたい格好をしていた女が、あれほどまでに変わったのだ。
「…何があったんだ?」
ルーカスが疑問を唱えると、デリックは頭を抱える様にして口を開いた。
「…見ろよ、あの目。イザベラのやつ、完全にあの放蕩息子に惚れてるよ。」
イザベラはちょうど噂をしている3人を目に留めると、男を連れて駆け寄ってきた。
「デリックにルーカス、デイジーまでお揃いだわ!見て、これ全部ニコラスさんがやってくれたの!」
イザベラは嬉しそうに報告すると、ニコラスにも同意を求めているのか、笑顔を向けた。
「俺、イザベラはきっと可愛らしい雰囲気の方が似合うと思ったんです。それで…」
「それで…イザベラに手は出してないんだろうな?」
デリックがドスを効かせた声で尋ねると、イザベラが慌てて弁解した。
「違うの、デリック!勘違いしないで!ニコラスさんは私のメイクをして、ドレスを選んだだけで…」
「まぁ、着替えも手伝いたかったんだけど恥ずかしいなんて言うから、また次の機会に…」
「ちょっ!ニコラスさん!」
イザベラは、冗談で言いかけたニコラスの声を遮って一瞥した。
「でも…大丈夫なのか?こんなちゃらんぽらんな男…」
ルーカスが言うと、イザベラは顔を赤くした。
「違うわ、今日はたまたま私のスタイリストになってくれただけで!何もそういう関係じゃ…」
「イザベラ、違う。俺はそんなつもりで部屋に呼んだんじゃないよ。君とはもっと仲良くなりたいんだ。」
イザベラはその言葉に少し照れ、下を向いてしまった。
落ち着かない様子で会場を出て行ったジャックが戻って来ないのはともかく。
デルーロ家の二男であり、本当の意味での不肖の息子、ニコラスとイザベラがまるで駆け落ちをしたかのように出て行ったきり、戻って来ないのである。
その少し前にはルクレツィアがデルーロ家の長男、ランスと共にどこかへ姿を眩ませている。
ルクレツィアの事は正直どうでもいいのだが、イザベラがどこかへ連れ去られたのかもしれないと思うと兄心としても心配である。
それに相手はあの遊び人だ。
パーティーも予定終了時刻まであと1時間を切っている。
デリックはイライラと長い脚を揺すりながら腕時計を見ていると、大きな扉が開かれた。
そこにはデルーロ家の不肖の息子にエスコートされる、淡いドレスに身を包んだ可愛らしい女性…イザベラがいたのだ。
会場にいる人の視線が皆、彼女を捉えていた。
「兄さん、あれって…それにイザベラ、どうして着替えてるんだ?」
ルーカスがデイジーと共に近付いてきたが、デリックはわけが分からず首を振るだけだった。
「イザベラ様、すごく素敵ですわ…」
デイジーまでもが呟いた。
ついさっきまでとても上品とは言いがたい格好をしていた女が、あれほどまでに変わったのだ。
「…何があったんだ?」
ルーカスが疑問を唱えると、デリックは頭を抱える様にして口を開いた。
「…見ろよ、あの目。イザベラのやつ、完全にあの放蕩息子に惚れてるよ。」
イザベラはちょうど噂をしている3人を目に留めると、男を連れて駆け寄ってきた。
「デリックにルーカス、デイジーまでお揃いだわ!見て、これ全部ニコラスさんがやってくれたの!」
イザベラは嬉しそうに報告すると、ニコラスにも同意を求めているのか、笑顔を向けた。
「俺、イザベラはきっと可愛らしい雰囲気の方が似合うと思ったんです。それで…」
「それで…イザベラに手は出してないんだろうな?」
デリックがドスを効かせた声で尋ねると、イザベラが慌てて弁解した。
「違うの、デリック!勘違いしないで!ニコラスさんは私のメイクをして、ドレスを選んだだけで…」
「まぁ、着替えも手伝いたかったんだけど恥ずかしいなんて言うから、また次の機会に…」
「ちょっ!ニコラスさん!」
イザベラは、冗談で言いかけたニコラスの声を遮って一瞥した。
「でも…大丈夫なのか?こんなちゃらんぽらんな男…」
ルーカスが言うと、イザベラは顔を赤くした。
「違うわ、今日はたまたま私のスタイリストになってくれただけで!何もそういう関係じゃ…」
「イザベラ、違う。俺はそんなつもりで部屋に呼んだんじゃないよ。君とはもっと仲良くなりたいんだ。」
イザベラはその言葉に少し照れ、下を向いてしまった。