Time Paradox
ルクレツィアが一人、ホールの外にあるドリンクカウンターのような所でグラスを並べていた。
この場所で他に人は見当たらない。
そもそもこれは城の使用人に任せるはずのことなのだが、気分を切り替えたいのだろう、人数分のグラス1つ1つに氷を入れ、赤ワインをグラスの半分まで注いでいる。
「ルクレツィア!人数も多いし、俺も持っていくよ。」
ランスは後ろから声をかける。
「…いいわ、大丈夫よ。」
ルクレツィアは目も合わせようとしなかったが、ランスは彼女の体の向きを自分の方に向けた。
「ちょっと、何なの?」
「さっきのは、どういうつもりなんだ?ルクレツィア、お前は全て計算で出来ているように見えるが、たまに突拍子もない行動を取る…何を考えてるんだ?」
「…どんな人間だって、他人から全て見透かされるような人はいないわ。あなたが人の考えている事を読めると思っているのなら、それはあまりにも傲慢だわ!…それに私だって人間よ!」
ルクレツィアはセラミックのような頰をやや紅潮させ、珍しく感情を露わにした。
「…それは謝るよ、申し訳ない。だがルクレツィアって本当は…女性も恋愛対象に…」
「差別的な言い方しないで!」
「いや、そんなつもりはないんだ!ただ…彼女にも本気になってしまったらまた辛くなるんじゃないかと…」
「何を言ってるの?彼女はターゲットにはなり得ないわ。」
「いや、それは違う。彼女自身の事を調べ上げる事は無かったとしても、彼女が何か重要な事実を握っているかもしれないし、嘘をついたり騙したりする事だって必要になってくるかもしれない。余計に辛くなる事は…」
「分かってるわよ!私だってやめられるものならやめたいわ!こんな意地の悪い仕事も、簡単に人を好きになってしまう事も…だけどやっぱりお金に目は眩むし、野心が満たされていくのもやめられない。それでも恋愛体質なのか、ジャックにも、イザベラ様にだって…」
その言葉は、近寄りがたい無機質なルクレツィアと、人間らしい感情的なルクレツィアが葛藤している事を表しているようだった。
ルクレツィアは心なしか悔しそうな表情のまま、体の向きを元に戻した。
そして先ほどワインを注いだグラスにジンジャーエールを注いでいき、炭酸が抜けないようにゆっくりとマドラーで混ぜる。
合わせて8人分を作ると、二人はお盆に乗せてホールへと運んだ。
この場所で他に人は見当たらない。
そもそもこれは城の使用人に任せるはずのことなのだが、気分を切り替えたいのだろう、人数分のグラス1つ1つに氷を入れ、赤ワインをグラスの半分まで注いでいる。
「ルクレツィア!人数も多いし、俺も持っていくよ。」
ランスは後ろから声をかける。
「…いいわ、大丈夫よ。」
ルクレツィアは目も合わせようとしなかったが、ランスは彼女の体の向きを自分の方に向けた。
「ちょっと、何なの?」
「さっきのは、どういうつもりなんだ?ルクレツィア、お前は全て計算で出来ているように見えるが、たまに突拍子もない行動を取る…何を考えてるんだ?」
「…どんな人間だって、他人から全て見透かされるような人はいないわ。あなたが人の考えている事を読めると思っているのなら、それはあまりにも傲慢だわ!…それに私だって人間よ!」
ルクレツィアはセラミックのような頰をやや紅潮させ、珍しく感情を露わにした。
「…それは謝るよ、申し訳ない。だがルクレツィアって本当は…女性も恋愛対象に…」
「差別的な言い方しないで!」
「いや、そんなつもりはないんだ!ただ…彼女にも本気になってしまったらまた辛くなるんじゃないかと…」
「何を言ってるの?彼女はターゲットにはなり得ないわ。」
「いや、それは違う。彼女自身の事を調べ上げる事は無かったとしても、彼女が何か重要な事実を握っているかもしれないし、嘘をついたり騙したりする事だって必要になってくるかもしれない。余計に辛くなる事は…」
「分かってるわよ!私だってやめられるものならやめたいわ!こんな意地の悪い仕事も、簡単に人を好きになってしまう事も…だけどやっぱりお金に目は眩むし、野心が満たされていくのもやめられない。それでも恋愛体質なのか、ジャックにも、イザベラ様にだって…」
その言葉は、近寄りがたい無機質なルクレツィアと、人間らしい感情的なルクレツィアが葛藤している事を表しているようだった。
ルクレツィアは心なしか悔しそうな表情のまま、体の向きを元に戻した。
そして先ほどワインを注いだグラスにジンジャーエールを注いでいき、炭酸が抜けないようにゆっくりとマドラーで混ぜる。
合わせて8人分を作ると、二人はお盆に乗せてホールへと運んだ。