Time Paradox
「昔からモンフォワーシュは、ルッケルンガルを始めとした人間界からの文化や技術を模倣しながら、魔法の国としての文化を築いてきたの。それに比べて、他の魔法使いの国では、人間界を真似る事なく独自の文化を築いてきて…ここ近年で急速に人間界化するモンフォワーシュに対して意義を唱える人々も増えてきていたわ。」
たしかに、リリアーナがルッケルンガルからモンフォワーシュに来た時、魔法使いの国だということにはじめは気が付かなかった。
さらにこの街に溶け込むために購入したカラーコンタクトやヘアカラーにも、違和感を感じることはなかったのだが…
「昔から、モンフォワーシュの王室や街並みは美しい人間界の文化をお手本にしていたの。それはお隣のアリティア王国や、ヴァンパイアの国であるアルフォンス王国でも大体同じ。だけど、モンフォワーシュは人間界で使われている科学的な技術までもを取り入れてしまったわ。たしかに魔法って、使う人の技術によって差が出るし少し勝手が良くない所もあるじゃない?その点、人間界で使われている技術は、発明する人が頑張って商品やら何やらで形にしてしまえば、誰でも同じように使える便利なものでもあるの。
けど、今まで魔法で仕事を貰って生活をしていた人達からしてみると、そんなのたまったものではないじゃない?さらにマスコミがどんどん不安を煽るようなことを報道するものだから、反人間界化の人達も増えてきて…そんな矢先だったの。あなたの家族が殺されてしまったのは…。」
クラリスはそう言うと、沈黙を隠すように一口紅茶を口にし、また質問を投げかけた。
「ヴィヴィアン様が嫁いできた話はきいてるかしら?」
「お母様はパーティーでお父様に会って…それから18歳で結婚してこの城に住む事になったんですよね。」
「…えぇ。お母様の旧姓はヴィヴィアン・プレスリー。古くから続く魔法商人の貴族だったんだけど、例の人間界化の影響を直に受けてプレスリー家は完全に傾きかけていたわ。そんな時、ケインズ家が主催するパーティーにプレスリー家が招待されたの。ヴィヴィアン様は年頃だったし、結婚したら近い将来、エドモンド様が政治の実権を握る事になるからって…ヴィヴィアン様にチャンスを託されたの。つまり、プレスリー家を守るためにも政略結婚をしてきなさいって身内に説得された…まぁ、ひどい話よね?けど、良くも悪くもヴィヴィアン様はその会場に集まったどの貴族よりも美しくて…あっさりとエドモンド様に見初められてしまったわ。」
リリアーナはクラリスの話を口を挟まずに聞いていたが、1つ気になることがあった。
「あの…でもお母様がお父様と政略結婚したからと言って人間界化が進んでいることは何も変わりませんでしたよね?お父様も魔法社会を守りたい気持ちがあった割には…」
「それがね…」
クラリスは小さな声が聞こえる距離までリリアーナに近付くと、話を続けた。
「その事に関しては、エドモンド様とヴィヴィアン様はもちろん、アドルフの父親であり当時エドモンド様の側近であったマーカスでさえ、みんな同じ意見だったの。」
「えっ!じゃあどうしてマーカス様は…!その…私たちを…」
「殺したのかって?」
リリアーナが感情的になって言いかけた言葉をクラリスが補い、どこか遠い目をしながら静かに言った。
「…あの日からもう何度も聞いてるんだけど、何も答えようとはしないわ。“裏切られたのは俺の方だ”って、そればっかり。それにあの人、その話をあんまり追及したら取り乱すし、今度は過呼吸になっちゃって…主治医が安定剤を出しながらその話はするなって言うもんだから、もうそれっきり。」
「そうだったんですね…」
一瞬でも期待してしまったが、やはりそんなにすぐこの謎が解決するはずはなかった。
たしかに、リリアーナがルッケルンガルからモンフォワーシュに来た時、魔法使いの国だということにはじめは気が付かなかった。
さらにこの街に溶け込むために購入したカラーコンタクトやヘアカラーにも、違和感を感じることはなかったのだが…
「昔から、モンフォワーシュの王室や街並みは美しい人間界の文化をお手本にしていたの。それはお隣のアリティア王国や、ヴァンパイアの国であるアルフォンス王国でも大体同じ。だけど、モンフォワーシュは人間界で使われている科学的な技術までもを取り入れてしまったわ。たしかに魔法って、使う人の技術によって差が出るし少し勝手が良くない所もあるじゃない?その点、人間界で使われている技術は、発明する人が頑張って商品やら何やらで形にしてしまえば、誰でも同じように使える便利なものでもあるの。
けど、今まで魔法で仕事を貰って生活をしていた人達からしてみると、そんなのたまったものではないじゃない?さらにマスコミがどんどん不安を煽るようなことを報道するものだから、反人間界化の人達も増えてきて…そんな矢先だったの。あなたの家族が殺されてしまったのは…。」
クラリスはそう言うと、沈黙を隠すように一口紅茶を口にし、また質問を投げかけた。
「ヴィヴィアン様が嫁いできた話はきいてるかしら?」
「お母様はパーティーでお父様に会って…それから18歳で結婚してこの城に住む事になったんですよね。」
「…えぇ。お母様の旧姓はヴィヴィアン・プレスリー。古くから続く魔法商人の貴族だったんだけど、例の人間界化の影響を直に受けてプレスリー家は完全に傾きかけていたわ。そんな時、ケインズ家が主催するパーティーにプレスリー家が招待されたの。ヴィヴィアン様は年頃だったし、結婚したら近い将来、エドモンド様が政治の実権を握る事になるからって…ヴィヴィアン様にチャンスを託されたの。つまり、プレスリー家を守るためにも政略結婚をしてきなさいって身内に説得された…まぁ、ひどい話よね?けど、良くも悪くもヴィヴィアン様はその会場に集まったどの貴族よりも美しくて…あっさりとエドモンド様に見初められてしまったわ。」
リリアーナはクラリスの話を口を挟まずに聞いていたが、1つ気になることがあった。
「あの…でもお母様がお父様と政略結婚したからと言って人間界化が進んでいることは何も変わりませんでしたよね?お父様も魔法社会を守りたい気持ちがあった割には…」
「それがね…」
クラリスは小さな声が聞こえる距離までリリアーナに近付くと、話を続けた。
「その事に関しては、エドモンド様とヴィヴィアン様はもちろん、アドルフの父親であり当時エドモンド様の側近であったマーカスでさえ、みんな同じ意見だったの。」
「えっ!じゃあどうしてマーカス様は…!その…私たちを…」
「殺したのかって?」
リリアーナが感情的になって言いかけた言葉をクラリスが補い、どこか遠い目をしながら静かに言った。
「…あの日からもう何度も聞いてるんだけど、何も答えようとはしないわ。“裏切られたのは俺の方だ”って、そればっかり。それにあの人、その話をあんまり追及したら取り乱すし、今度は過呼吸になっちゃって…主治医が安定剤を出しながらその話はするなって言うもんだから、もうそれっきり。」
「そうだったんですね…」
一瞬でも期待してしまったが、やはりそんなにすぐこの謎が解決するはずはなかった。