Time Paradox

逢瀬と猫

夕方、ルイスの退屈な授業を終えたリリアーナの心には寂しさが込み上げていた。

リリアーナは隠し通路を抜け外に出ると、辺りを見回した。

ジャックはまだ来ていないのだろうか?
ふと自分の腕時計に目をやった。

だがその時、何者からか回された腕が優しくリリアーナの身体を締め付けた。

「…ジャック?」

「…こうやって会うのも久しぶりだな。」

「…そうね。城を抜け出すのってなかなか勇気のいる事だから…。」

リリアーナが言うと、ジャックの腕に少し力がこもるのを感じた。

「それでもこうやって会えて嬉しいし…」

ジャックはそこで言葉を止めた。

リリアーナからはジャックがどんな表情をしているのか見えなかったが、その先の言葉はリリアーナも何となく想像がついていた。

だがリリアーナもジャックも、二人にとってはまだ早いような気がしていた。

リリアーナは何も言わずにジャックの腕に優しく手を重ねた。

それが彼女に今できる精一杯の応えだった。
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