Time Paradox
ニコラスの陰
秋から冬に変わる短い陽が傾きかけた頃、玄関の扉が閉まる音に続き、上機嫌なハミングが聞こえてきた。
「イザベラ、お帰りなさい!私が仕事してる間、彼とは進展があったんでしょうね?」
リリアーナがニヤニヤしながらイザベラを迎えると、イザベラはリリアーナの両手を掴んでくるくると回る。
「ふふふ!彼ってばナルシストなのに意外と真っ直ぐで素直な所もあって可愛いんですの!」
イザベラはリリアーナの右手だけは離さず、スキップするかのように階段をリズミカルに上っていく。
「イザベラ様、リリアーナ様!もうすぐ夕食の時間ですよ!」
デイジーの声が朝食を囲んだ大きな部屋から聞こえると、イザベラは浮き足立った声のまま返事をした。
「イザベラ、私達も夕食に向かいましょう!
さっき手伝った時は夕食の準備も済んでたはずだから、もうそろそろ並び始めている頃よ?」
「リリアーナ様、ディナーなんだから…その前にお着替えをしましょう!」
リリアーナはふっと笑みを漏らすと、呆れたような顔のままイザベラの部屋に引っ張られた。