Time Paradox
二人は朝食を済ませると、ジル・ブランの待つ部屋へと向かった。

ジルは部屋に入ってきた二人を見るなり、すぐさま薬指に輝くリングに目を奪われた。

「おはようございます。ハンナ様、アドルフ様！全て特注で作らせていただいた指輪の方はいかがですか？」

「おはようございます。こちらの希望にピッタリの繊細なデザインで…お陰様でこの通り…ハンナ様も嬉しそうです。」

リリアーナは嬉しそうに指輪を付けたり外したりを繰り返している。

ジルはその様子に微笑みながらも、明日に迫る挙式の話し合いをすべく二人を向かいの椅子に座らせた。

「明日は９時から式が始まり、チャペルに入ります。１１時からはバルコニーで一般の方にお披露目とスピーチ、１２時からは伝統的な馬車での城下町一周となります。
それが終わり次第、城のホールにてパーティーを予定しています。」

「なるほど。だとすると、準備も兼ねてかなり早朝から動き出す予定にはなりそうですね。」

「えぇ。余裕を持って朝の５時半くらいには衣装部屋に来ていただきます。」

リリアーナは上の空で指輪を見つめていた。

白っぽいプラチナでできたシルバーのリング部分は蔦のように絡み合っていて、大きなトパーズを支える部分には妖精の羽を思わせるデザインがあしらってあった。

「ハンナ様、聞いてますか？」

アドルフの呼び掛けに振り向くと、覗き込む
グレーの目を見た。

その瞬間、リリアーナは何も言わず満面の笑みで頷く。

「すみません、ハンナ様は今日からずっとこの調子で…」

「いえ、気に入っていただけたようでこちらも嬉しいですよ。」

アドルフは申し訳なさそうにしていたが、ジルは気にしていないようだった。
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