Time Paradox
だが、今回はなかなか部屋から出て行ってくれなかった。


「…ルーカスさん?」

「リリアーナ様がまた勝手に抜け出すと悪いので、眠りにつくまで見守らせていただきます。」

「…えぇっ?それじゃあ眠れないわ!」

ルーカスは抗議するリリアーナにもお構いなし。それどころか近くの椅子に座り始めた。

何を考えているのか全く想像のつかないルーカスは、リリアーナの事をどこまで読んでいるのか分からなかった。

そんな相手にジロジロと見られてるのは居心地が悪いため、リリアーナは仕方無しに顔を反対側に向け、寝たふりを実行した。

しばらくするとリリアーナが本当に寝たと思ったのだろうか、こちらへルーカスが近付いて来た。リリアーナの体も強張る。

ルーカスは布団の中にしまっていたリリアーナの右腕を出し、懐から何かを取り出した。

そしてリリアーナの右手首に刃物で切られたような鋭い痛みが走る。

リリアーナは驚いて目を開けると、案の定ナイフでリリアーナの手首に切れ込みを入れ、血を採取していた。

何か紙のような物にリリアーナの血を数滴垂らすと、魔法が効いているのかバラの形に広がった。

国に関わる書類で特に大事なものには、判子だけでなくこの魔法が使われることをリリアーナは知っていた。

この魔法は王家の血を受け継ぐ者かどうかを確認するためのものである。

たった今、リリアーナは王家の血を受け継ぐ者だと言うことが、はっきりと証明されてしまった。
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