Time Paradox
石畳、川、綺麗に飾られた花。
車窓からはリリアーナに馴染みのない景色が流れ込んでいた。


「…素敵…。昔よく読んでた本と同じだわ！」

「よく読んでいた本…ですか？」


リリアーナの言葉にセドリックは不思議そうな顔をした。


「えぇ。魔法の国が舞台だったんだけど…なんて言う本だったかしら？」


リリアーナはタイトルを思い出せなかったが、気にせず二人にあらすじを話し始めた。


「魔法の国に住んでいる主人公のハンナには、両親がいなかったの。ハンナの両親は殺されたから。そこである日、ハンナが森へ行ったの。」


バスが停車し、乗客者の多くは住宅街で降りていた。


「あ！ちょうどあんな感じの森だったわ！」


バスのフロントガラスからは、ちょうどよく森の入り口が見えていた。


「そしたらその森で、ある妖精に出会うんだけど…たしかそこで、どういうわけか彼らに時間の動かし方を教えてもらえるの。」


バスが動き出すと、森の中には入らずにまた違う道を走っていた。


「本当は時間を動かす魔法は国で禁止されていて、封印されているはずなんだけどね。
ハンナはその魔法で両親が殺される前の時間に戻って、二人が殺されるのを阻止する事ができたの。
そして元の時間に戻って、両親と幸せに暮らしました、っていうお話。」


リリアーナが話し終えると、ジャックとセドリックは怪訝そうな顔をしていた。


「…二人とも、どうかした？」

「い、いえ！」

そう言ってジャックは慌てて目をそらした。

「…”両親が殺された”なんて童話にしては少々ダークな設定ですね…。」

そう言ったセドリックの表情は、心なしか強張っているようにも見えた。
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