Time Paradox

歓迎パーティー

リリアーナは一人部屋に残されると、ここを抜け出すことを考えた。

警備を固めると言われてからは、ずっと玄関の前にも外にも見張りが付いている。
さらに、この部屋から見ただけでも庭には10人以上の見張りがいるようだ。


リリアーナがため息を吐こうと息を吸ったその時、誰かがドアをノックした。

「リリアーナ様、パーティーの準備をしに参りました。」

リリアーナが返事をしてドアを開けると、昨日ドレスを着せてくれた無表情な子ではなく、パーティーでグラスを落とした時に来てくれたあの子だった。

「ありがとう。」

リリアーナはパーティーの準備と聞いてあの重い沈黙を耐えなければいけないと思っていたため、嬉しさでつい笑顔になった。

その少女もリリアーナの笑顔を見て顔がほころぶ。


「本日はどのようになさいますか？」

少女は楽しそうに言うと、ドレスの入った扉を開けた。

リリアーナはしばらく悩んでいたところ、ふとあるドレスに目が止まった。

リリアーナがハンナとして城に住んでいた時、母に譲ってもらったドレスとよく似ているものだ。



「ハンナ。このドレスはね、お母様とお父様が初めて出会った時のドレスなのよ。あなたも大きくなったし、きっと似合うと思うわ。」

そう言って１０歳のリリアーナことハンナに、母は優しい笑顔を向けてくれたのだった。



「…リリアーナ様？」

リリアーナは我に帰ると、少女が不思議そうな顔をしていた。

「あ、ごめんなさい。このドレスがいいわ。」

そう言ってリリアーナは思い出のドレスとそっくりの、黄色いドレスを手にした。
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