Time Paradox
リリアーナが会場に入ると、光沢のある黄色いドレスが目を引いた。

リリアーナはみるみるうちに顔が紅潮していくのが分かったが、平然を装う。

そしてリリアーナはしばらく歩くと、お手伝いの女性に飲み物を手渡された。おそらく乾杯する時に使うのだろう。


やがてルーカスがパーティーの開会宣言をし、今夜のゲストの紹介を始めた。

「今夜の主役、アドルフ・ナトリー様でございます!」

ルーカスがそう言うと、少し眩しそうなスポットライトを浴びたアドルフが登場した。

会場の中のたくさんの女性の黄色い声が飛び交い、拍手が鳴り響く。

アドルフがマイクの前へ移動すると、会場は水を打ったように静かになった。

「皆様、本日はお招きいただきありがとうございます。今夜はこの素敵なお屋敷で、我が国の平和とさらなる繁栄と祈りまして、乾杯!」

アドルフに続き、会場には”乾杯”と言う声が鳴り響く。

ワイングラスを近くのテーブルに置いてしまっていたリリアーナだが、慌ててみんなに合わせて乾杯をした。

そして会場の多くの人が持っていた飲み物を飲み始めた。

それを見たリリアーナも何気なく飲もうとした時、デリックと目が合って昨日の事を思い出した。
誰かに渡された飲み物は飲まない方がいいのかもしれない。

リリアーナがグラスを口から遠ざけたのを見たデリックは頷き、こちらへ向かってきた。

デリックは周囲を確認すると、小さな声で話しかけた。

「これにも何か入ってる可能性が高い。特に今日のは危険だ。」

「…えっ?」

リリアーナはその言葉に、鳥肌がたつのを感じた。

「いいか、この液体は俺があとで調べる。」

そう言ってデリックは誰も見ていないのを確認し、グラスを交換した。

「ありがとう、デリック。」

デリックは頷くと、会場を後にした。
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