Time Paradox
リリアーナはデリックの残した手付かずのグラスをテーブルに置いた。
きっと酔った誰かが飲み干してくれるだろう。

イザベラの様子を見てみると、案の定アドルフに話しかけていた。というよりも詰め寄っていたという方が正しいのかもしれない。

リリアーナは退屈になってしまったので、2階で謎の液体を調べているデリックの所へと行ってみる事にした。


階段を登る時にさりげなく玄関の方を見てみたが、見張りが2人も立っていて逃げる事は不可能だろうと思った。


リリアーナはデリックを探しに2階の廊下をうろうろしていると、デイジーがお盆を持って奥の部屋から出てくるのが見えた。

「デイジー!」

リリアーナが声を掛けると、デイジーは驚いていた。

「リリアーナ様…!」

「なんだか飽きちゃって。外にも出られなさそうだったし…」

「でも今夜も仲のよろしいデリック様と踊っていたのでは?」

「あ、そうなの!私デリックを探してて…そんな事よりさっきから気になったんだけど、誰か風邪でも引いたのかしら?」

リリアーナはデイジーの手にしているお盆の上の、木でできた皿を見た。

この屋敷に似合わず素朴な雰囲気のその皿は、食べやすいお粥のようなものが入っていたのだろう、とリリアーナは思った。

「…それは、あの…」

デイジーはなぜか困ったような顔をした。

リリアーナが首を傾げると、デイジーは声をひそめた。

「リリアーナ様、部屋へお戻りください。これを片付けたら私も部屋へ行きますので、そこで話します。」
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