Time Paradox
リリアーナは自室へ戻ると、程なくしてデイジーも部屋にやって来た。

リリアーナがデイジーを椅子に座るように促すと、「失礼します」と言って座った。


「…それで、さっき私が聞いた事って、そんなに大きな声じゃ言えない話なの?」

リリアーナが不思議そうに聞くと、デイジーは視線を泳がせていたが、意を決したのか口を開いた。


「…あの方は風邪ではなくて、末期なんです。」

「…あの方って?もう治らない病気なの?」

「…はい。このモーリス・アーノルド様です。」

「…モーリス・アーノルド?それってもしかして…」

「はい。デリック様、ルーカス様、イザベラ様の父親にあたる方です。」

なかなか思い出せなかったが、やっとリリアーナの頭の中で繋がった。

それはリリアーナが決して姿を見る事のできなかった黒幕、モーリス・アーノルドである。

「…そうだったんだ。そういう事だったのね。」

リリアーナが一人で納得していると、デイジーははっとしたように立ち上がった。

「リリアーナ様、舞踏会に戻らなければ!さすがにずっと抜け出したままではいけません!」

「あ、あぁ…」

リリアーナは残念そうに俯いた。

「あ、そういえば私デリックを探しに来たの!用事があったんだわ!」

そう言ってリリアーナは勢いよく立ち上がると、デイジーの方を見る。

デイジーはやれやれといった感じでドアを開けると、リリアーナの部屋から3つ離れた所まで案内した。


「ここがデリック様のお部屋になります。」

「ありがとう、デイジー。」

リリアーナはお礼を言うと、デリックの部屋をノックした。
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