Time Paradox
しばらく反応がなくリリアーナは心配になったが、急にドアが開いた。

部屋に入るとデリックは机に向かっていて、どうやら遠くからドアを開ける魔法を使ったらしい。

リリアーナはドアを閉めると、デリックの背後から作業を覗き込む。

紙に謎の液体を数滴垂らし、何かをブツブツと唱えている。

すると、液体を垂らした部分が一瞬怪しい色に光った。

作業が終わったのか、デリックは手を止めて伸びをし始めた。


「…危ないところだったな。」

デリックは伸ばしていた両手を下ろすと、背後にいたリリアーナの方に向き直った。

「…何が分かったの…?」

リリアーナは恐る恐る聞くと、デリックが何でもない事のように言う。

「俗に言う顔面崩壊液だ。」

「…それって…」

「あぁ。詳しい事は知らないが、複雑に魔法薬を組み合わせる事によってできるらしい。」

もしあそこでうっかり飲んでしまったら…リリアーナは言葉が出なかった。

「…誰が仕掛けたかは分からんが、このリトマス紙で調べたんだよ。」

デリックはショックを受けているリリアーナに構わず続けた。

「最近のリトマス紙は魔法でどんどん進歩してきていて、今のような複雑なものを調べられるようになってきた。毒が入ってるかどうかは…」

「私、早く逃げなきゃ…!」

リリアーナはデリックの言葉を遮った。
呑気にリトマス紙の話をしている場合ではないのだ。
自分を徹底的に堕とそうとしている人間がいるのだ。


「デリック、あなたなら協力してくれるわよね…?」

「いや、心配はいらない。」

「…どういう、意味なの…?」

「大丈夫だ、そろそろ戻るぞ。面倒なことになるからな。」

そう言ってデリックはリリアーナを引っ張った。
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