Time Paradox
「ほら、じゃあもう仲直りだ!」

デリックはそう言って二人を向き合わせると、リリアーナとジャックの手を取り、握手をさせる。

「相棒なんだから、もう喧嘩するなよ?」

そう言って二人の背中を叩いた。
加減をしているつもりのようだが、なかなか痛かった。
だがジャックも同じような顔をしていて、二人はつい笑ってしまった。

「でもそろそろ王子の見送りに行かないとな、城の車が来る前に。」

デリックはそう言って歩き出し、3人もその後に続く。


すでに、アドルフは玄関でルーカス達と話していた。

「あ、ハンナ様とデリック様と…」

「この茶髪がジャック、こっちのお手伝いはデイジーです。」

「そうでしたか。これはこれは、ジャック様にデイジー様!」

アドルフはそう言って頭を下げると、デイジーもジャックも、うやうやしく頭を下げた。

「アドルフ様、どうかリリアーナ様の事は内密に…」

「もちろんですよ。僕がここで会ったのはリリアーナ様という方ですからね。
ハンナ・ケインズ様とは何の関係ありませんよ。」

そう言ってアドルフは、茶目っ気たっぷりにウインクして見せた。

「アドルフ、本当にありがとう。」

「いえ。あの日からハンナ様の行方が分かっていなかったので、ここでまたお会いできて本当に嬉しかったですよ。」

「私もよ。もう二度と会う事はないと思ってたから…」

その言葉に、ブルーとグレーの中間のような瞳が揺れたように感じた。

だがその時、屋敷の庭から車が入って来るような音が聞こえた。

「…迎えが来てしまったようです。皆様、本当にありがとうございました。もしよろしければまた、このような機会を設けていただければと思います。」

アドルフは深くお辞儀をすると、リリアーナに笑顔を向けた。

「アドルフ、さようなら。私隠れなきゃ!」

「えぇ。また今度!」

アドルフがそう言うとリリアーナは頷き、デリックに促されて近くの部屋へと隠れた。
リリアーナ達は応接間のドアを閉めると、数秒後に玄関の扉が開かれる音が聞こえた。

そしてしばらく愛想の良い話し声と笑い声が聞こえた後、ドアの閉まる音が響いた。
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