Time Paradox
目撃情報
2人はどこで腹を満たそうかとアーニャ川沿いを歩き回っていると、近くの酒場から賑やかな声が聞こえてきた。
「なんだか今日はいつも以上に騒がしいな…」
「あそこのお店からだわ。」
何となく気になった2人は、好奇心に駆られて入ってみる事にした。
ベルの音と共に2人が店に入ると、ひどく酔った大学生が騒ぎ立てていた。
2人は様子をうかがいながらもカウンター席に着き、お通しを出されたタイミングでビールを二つ注文した。
すぐにジョッキが二つ置かれると、二人は今日1日の労働に労いの意味も込め、乾杯をして一気に半分程まで飲み干した。
大学生達による絶えない騒音で、いつも以上に声を張りながら今日の反省をしていた二人だが、一杯目を飲み干すのにそう時間はかからなかった。
もちろんお通しのスナック菓子では物足りなく、ビールの追加が置かれた際に勧められたすぐに出せる食事を、既に2杯目のジョッキを傾けながら待つ。
「こういう温めなくていいフードは助かりますね、今日みたいな日には。」
そう言いながらカウンターの裏側から店長らしきおじさんがトマトとチーズを並べた料理と、二種類ほどのフライとソースの乗った皿を並べた。
空腹のピークを迎えていたリリアーナは話もそこそこに、料理と飲み物を交互に減らす作業に夢中だった。
そんな彼女にジャックは口元を緩めつつも、店の中央で言い合う大学生の方をちらりと見た。
それに気付いた店のおじさんは、迷惑そうに大学生の方を見ながら、声をひそめて言った。
「すいませんねぇ、お客さん。この店はなぜか大学生の溜まり場らしくって。」
「それにしても、今日はいつもより賑やかですね。何かあったんですか?」
異様に騒ぐ大学生を見てからジャックが尋ねると、おじさんは更に声をひそめて言った。
「…いやぁ。何でも、あの大学生達は専ら今の政権に反対でね…」
おじさんの小さな声は、大学生の激しい討論によって遮られた。
と言うのも、反射的に意識がそちらへ向かわざるを得なくなったからである。
「ハンナ・ケインズをこの街で見た人がたくさんいるらしいんだよ!」
ムラだらけの薄緑色の髪をした大学生がそうまくし立てると、一瞬で店の空気が変わった。
脱色をして自分で染めているであろう髪は、大学生になり、目立てるチャンスを逃すまいとした必死さを感じる。
「でもおれはあの女が生きているからと言って、今の状況が好転するとは思えないね!」
緑髪の学生がそういい捨てると、今度は半端な赤茶色の髪の学生が言い返した。
「だからってお前はあの男に差し出して金を貰おうってのか⁈」
「あぁ!その通りだ‼︎大体、国のために何にもしてこなかったお飾りだけのお姫様に何ができるってんだよ?」
緑髪の男がそこまで言った所でリリアーナが勢いよくグラスを置き、立ち上がった。
身体の向きを変えたリリアーナに衆目が集まるが、彼女がそれを気にしている様子はない。
見ると、リリアーナはちゃっかりジョッキ二杯を空にし、食事もほぼ完食しているではないか。
「…おい、止めとけってリリアーナ!」
腕を掴んで引き止めるジャックだが、リリアーナはその手を振りほどき、ゆっくりと大学生の集団に近づいていく。
「何だよ?この酔っ払い女。」
緑髪の男が怪訝そうな顔をし、周りの大学生達は道を開ける。
すると何を思ったか、リリアーナはいきなりその男の胸ぐらを掴んだ。
「…私が国のために何もしてこなかったお姫様だぁ?そういうあんたは二十歳過ぎて国のために何してきたんだよ?
…もしかして親の金で酒飲みながらここで世論討論会してたって?笑わせんな!」
リリアーナはそう吐き捨てると、その男を突き飛ばした。
「…お前、まさか…」
突き飛ばされた男は目を丸くしていた。
気が付けば周りがざわつき始めている。
「逃げるぞ。」
ジャックはリリアーナの腕を強く引っ張ると、急いで酒場を後にした。
「あいつらを追え!国王に差し出してやる!」
背後からはそんな声が聞こえ、追手の足音が響いた。
「なんだか今日はいつも以上に騒がしいな…」
「あそこのお店からだわ。」
何となく気になった2人は、好奇心に駆られて入ってみる事にした。
ベルの音と共に2人が店に入ると、ひどく酔った大学生が騒ぎ立てていた。
2人は様子をうかがいながらもカウンター席に着き、お通しを出されたタイミングでビールを二つ注文した。
すぐにジョッキが二つ置かれると、二人は今日1日の労働に労いの意味も込め、乾杯をして一気に半分程まで飲み干した。
大学生達による絶えない騒音で、いつも以上に声を張りながら今日の反省をしていた二人だが、一杯目を飲み干すのにそう時間はかからなかった。
もちろんお通しのスナック菓子では物足りなく、ビールの追加が置かれた際に勧められたすぐに出せる食事を、既に2杯目のジョッキを傾けながら待つ。
「こういう温めなくていいフードは助かりますね、今日みたいな日には。」
そう言いながらカウンターの裏側から店長らしきおじさんがトマトとチーズを並べた料理と、二種類ほどのフライとソースの乗った皿を並べた。
空腹のピークを迎えていたリリアーナは話もそこそこに、料理と飲み物を交互に減らす作業に夢中だった。
そんな彼女にジャックは口元を緩めつつも、店の中央で言い合う大学生の方をちらりと見た。
それに気付いた店のおじさんは、迷惑そうに大学生の方を見ながら、声をひそめて言った。
「すいませんねぇ、お客さん。この店はなぜか大学生の溜まり場らしくって。」
「それにしても、今日はいつもより賑やかですね。何かあったんですか?」
異様に騒ぐ大学生を見てからジャックが尋ねると、おじさんは更に声をひそめて言った。
「…いやぁ。何でも、あの大学生達は専ら今の政権に反対でね…」
おじさんの小さな声は、大学生の激しい討論によって遮られた。
と言うのも、反射的に意識がそちらへ向かわざるを得なくなったからである。
「ハンナ・ケインズをこの街で見た人がたくさんいるらしいんだよ!」
ムラだらけの薄緑色の髪をした大学生がそうまくし立てると、一瞬で店の空気が変わった。
脱色をして自分で染めているであろう髪は、大学生になり、目立てるチャンスを逃すまいとした必死さを感じる。
「でもおれはあの女が生きているからと言って、今の状況が好転するとは思えないね!」
緑髪の学生がそういい捨てると、今度は半端な赤茶色の髪の学生が言い返した。
「だからってお前はあの男に差し出して金を貰おうってのか⁈」
「あぁ!その通りだ‼︎大体、国のために何にもしてこなかったお飾りだけのお姫様に何ができるってんだよ?」
緑髪の男がそこまで言った所でリリアーナが勢いよくグラスを置き、立ち上がった。
身体の向きを変えたリリアーナに衆目が集まるが、彼女がそれを気にしている様子はない。
見ると、リリアーナはちゃっかりジョッキ二杯を空にし、食事もほぼ完食しているではないか。
「…おい、止めとけってリリアーナ!」
腕を掴んで引き止めるジャックだが、リリアーナはその手を振りほどき、ゆっくりと大学生の集団に近づいていく。
「何だよ?この酔っ払い女。」
緑髪の男が怪訝そうな顔をし、周りの大学生達は道を開ける。
すると何を思ったか、リリアーナはいきなりその男の胸ぐらを掴んだ。
「…私が国のために何もしてこなかったお姫様だぁ?そういうあんたは二十歳過ぎて国のために何してきたんだよ?
…もしかして親の金で酒飲みながらここで世論討論会してたって?笑わせんな!」
リリアーナはそう吐き捨てると、その男を突き飛ばした。
「…お前、まさか…」
突き飛ばされた男は目を丸くしていた。
気が付けば周りがざわつき始めている。
「逃げるぞ。」
ジャックはリリアーナの腕を強く引っ張ると、急いで酒場を後にした。
「あいつらを追え!国王に差し出してやる!」
背後からはそんな声が聞こえ、追手の足音が響いた。