Time Paradox
次の日の朝、リリアーナはアラームのけたたましい音に目を覚ました。

眠い目を擦りながらアラームを止め、のそのそと起き上がる。

7時にはレストランに行けるような時間に起きたので、まだ東の空はオレンジがかっていた。

朝ごはんのオムレツを作っている間にパンを焼き、スープを温める。

それを全て平らげると、歯を磨いて顔を洗い、髪にブラシをかけてきっちりとまとめた。

着替えを済ませて鏡を見ると、水色の瞳と目が合い、はっとした。

慌ててグリーンのカラーコンタクトを付け、ジャックを迎えに隣の部屋をノックした。

しばらくバタバタと物音が聞こえた後、いつもより眠そうなジャックが出てきた。

「お、おはよう!リリアーナ。」

「おはよう。今日はルッケルンガルの孤児院に行くのよ!忘れてないわよね?」

リリアーナが心なしか弾む声で言うと、ジャックはやはり眠そうに頷いた。

「それにしても早過ぎないか?バイトは7時からだっていうのに。」

「ジャックが寝坊してもいいように早起きしたのよ。」

リリアーナは偉そうにそんな事を言うが、本当はアラームを早くセットし、5分おきに鳴るようにしたのだ。

だが一回目のアラームで目を覚ましてしまい、こんな早くに家を出ることになってしまったのだ。

2人は昨日と同じアーニャ川沿いは歩かず、アパートのある大通りを歩くことにした。

リリアーナはふとある事を思い出し、恐る恐るジャックに尋ねた。

「…ねぇ、ジャック…?」

「ん?」

「…私たち昨日酒場から逃げてきた時、代金払ってないよね?」

「あぁ、その事ならリリアーナが暴れてる間に耳を揃えて支払っといたよ。」

「えぇっ?あんな短時間で⁉︎…お金はあとで返すわ。」

「いや、今回のような事はもうしないって約束するなら返さなくていいよ。」

「自信ないんだけど…いいわ、約束する。」

リリアーナはそう言って小指を差し出すと、ジャックもそれに応じた。
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